【浅草寺五重塔修復】瓦はチタンに葺き替え、外壁はセラMシリコン仕上げに 清水建設 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【浅草寺五重塔修復】瓦はチタンに葺き替え、外壁はセラMシリコン仕上げに 清水建設

五重塔最上層の屋根。チタン瓦に葺き替えた

 東京・浅草のシンボルとして多くの観光客でにぎわう浅草寺(東京都台東区)の「五重塔外部改修工事」が最終段階に入っている。築40年以上が経つ現在の五重塔は、4月に取り付けられた相輪だけでなく、瓦や外壁、前庭も清水建設の施工で改修を進めており、5月には足場が外され色鮮やかな姿を観光客の前に現す。
 浅草寺五重塔は、清水建設の施工でいまの姿になってから43年が経つ。規模はRC造地下1階地上2階建て塔屋5層延べ6454㎡。塔頂部の相輪は東日本大震災で破損し、屋根は劣化によりアルミ瓦の裏面に孔や点さび、汚れが見られ、軒先は積雪などでゆがみも生じていた。外壁は塗装がはがれ、クラック・爆裂などもあり、前庭は排水防水層の劣化、床石のずれなどが発生していた。
 清水建設は、浅草寺の本堂の改修も2010年に手掛けるなど、“宮大工”としての社寺建築技術をいまも維持している。増上寺や明治神宮、明治記念館、旧岩崎邸などの改修・補強を手掛けてきた河村壽則所長は「五重塔内では執務が続いており、年間約3000万人の観光客も訪れる。安全や騒音など細心の注意が必要」と語る。現場には『安全に勝る品質なし』というスローガンを掲げ日々、作業員に声を掛ける。
 五重塔最頂部に取り付ける相輪の設置作業では、地上35mで高さ15m以上の足場を金子架設工業の作業員が手際よく組み立て、新調した120tラフタークレーンを鳴島重機工事のオペレーターが操り、地上と屋上で連携しながら相輪を組み立てていった。
 老朽化したアルミ瓦は、チタン瓦に取り替え、防水シートも張り替えた。特に「既存の屋根の木材の下地が使えるのか」(河村所長)が大きな課題で、丹念に調査し、使用可能を確認。平面ではない屋根面への瓦の納まりにも気を使った。

朱色と白が目を引く 塗り替え後の外壁

 劣化した外壁塗装は、全面的にはがし、クラックにエポキシ樹脂を注入して、下地爆裂個所を撤去。部位に応じて躯体面をリフリート処理して、欠損部は補強し樹脂モルタルで補修、ガラスクロスで補強した上で躯体部をセラMシリコン塗装で仕上げた。本堂でも外壁塗装面を修繕した実績はあるが、「本堂はSRC造、五重塔はRC造で、構造が異なり、単純に本堂と同じ修繕はできない。本社の技術部門を交えながら使用する材料などを探った」(同)という。
 前庭部分では、基壇石を撤去して工場で磨き加工して復旧、床石も撤去して浮床工法で天然石に入れ替えた。基壇立ち上がり部と床面は新たに改質アスファルトで全面防水を施した。5月以降も、塔1層目床の天然石への更新、排水ドレーンの更新、1階天井ボードの張り替えなどが続く。
 工期は9月末まで。完成後には、重厚な鉛色の瓦と白と朱の鮮やかな外壁が、浅草のまちを再び彩ることになる。

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