【BIM2021】オノコム 「BooT.one」軸に情報共有 | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【BIM2021】オノコム 「BooT.one」軸に情報共有

 総合建設会社のオノコム(愛知県豊橋市)にとって、設計施工一貫BIMを採用した初のプロジェクトが5月13日に竣工した。社内のデジタル活用を統括する杉浦裕介執行役員は「これを機にフルBIMにチャレンジしていく」と力を込める。既に設計施工で受注した3プロジェクトへの導入を決め、2021年度からBIM活用の新たなステージに入ろうとしている。

 プレゼン用にBIMツールを導入したのは15年のことだ。設計や施工でも本格的に使いたいと、17年に社内標準BIMソフトとしてオートデスクの『Revit』を採用し、並行してフィリピン支店にBIMモデリングの部隊を置き、社員が無理なくBIMを使えるようにと、応用技術のRevit支援パッケージ『BooT・one』の導入も決めた。20年6月には小野達朗社長の号令でBIM化に向けた専門部署としてVDC(バーチャル・デザイン・コンストラクション)推進室を発足し、着実に体制を整えてきた。

 初の設計施工一貫BIMプロジェクトとなったのは同社関連会社であるミナト設備工業(愛知県豊橋市)の新社屋プロジェクトだった。規模はRC造3階建て延べ約500㎡だが、斜めのサッシで構成する複雑な構造であるため「計画当初からBIMなしでは実現できない」と判断していた。

ミナト設備工業新社屋外観


 プロジェクトのデザインを担当したフィリピン支店の那須貴寛テクニカルマネージャーは「ちょうどBIMを学び始めたタイミング」、設計業務を担当したVDC推進室の林和弘マネージャーも「初めてチャレンジするBIMのプロジェクト」であった。両者は「BIMと向き合いながら一つひとつ成果を出していった」と手応えを口にする。

 下支えしたのはBooT・oneの各種機能だった。林氏は「参考書のようにチュートリアル機能を見ながら設計を進められるほか、標準テンプレートも整備され、効率的に作業を進めることができた」と考えている。集計表や表計算、仕上げ・材料表などのフォーマットも用意されており、建築確認申請もスムーズに進んだ。

 そもそもBooT・oneの導入は、モデリング拠点として発足したフィリピン支店のスキルアップに活用することが目的だった。英語版パッケージの販売が計画されていることからBIMオペレータの教育ツールとして期待できるとの思いもあった。那須氏は「現在の日本ではBIMオペレーターが不足している状況だけに、フィリピン支店が国内BIMプロジェクトを支援していきたい」と力を込める。

モデリング拠点のフィリピン支店


 VDC推進室では、BIM関連に限らず、点群やVR系など最新デジタルツールの選定も進めている。杉浦氏は「頻繁にさまざまなツールがリリースされるため、できるだけ多くのツールを試し、われわれの業務に合うものを積極的に採用している。BooT・oneもその1つ」と明かす。オートデスクのクラウドサービス『BIM360』との連携で、離れた場所から複数人で並行して作業を進めることができるコラボレーション機能も魅力だった。

 ミナト設備工業新社屋プロジェクトでは、林氏とフィリピン支店の那須氏がリアルタイムに作業を進めてきた。BooT・oneを介してRevitの機能を確かめ合うとともに、互いがVRゴーグルを装着し、BIMモデルに点群データを連携させた空間を見ながら意見も交わした。両氏は「まるで互いが近くにいる感覚で作業できた」と振り返る。

 施工段階では建物構造が複雑であるため、協力会社がVRや3次元モデルを使って収まり確認するなど、現場も効果的にBIMモデルを活用してきた。当時はまだBooT・oneの仮設計画を含めた施工系パッケージがリリース前だったため、林氏は「今後のBIMプロジェクトで仮設計画にも積極的にBIMを展開していきたい」と考えている。

 既に同社は、延べ1万5000㎡を超えるオフィスビルなど進行中のプロジェクト3件にBIMの導入を決めている。設計施工案件をフルBIMの対象に位置付けているが、他社設計案件も建築主から3次元やVRを求められるケースもあり、顧客要求に応じ幅広く対応する方針だ。

 初めてのフルBIMをやり遂げた那須氏は「BooT・oneが大きな支えとなった」、林氏も「最初の一歩には最適なツールだった」と実感している。杉浦氏が「成功体験を味わうと、もう後戻りはできない」とBIMの魅力を訴えるように、同社は一気にBIM導入の階段を上り始めた。



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