フィーチャーインタビュー2025・大建工業 億田 正則社長 | 建設通信新聞Digital

9月18日 木曜日

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フィーチャーインタビュー2025・大建工業 億田 正則社長

【商号刷新 第2章の幕開け/海外を成長の原動力に】

 9月26日に創立80周年を迎える大建工業。同日付で商号を「DAIKEN」に刷新し、総合建材メーカーとしての新たな一歩を踏み出す。“第2章”の成長ドライバーと位置付ける海外事業では「カナダで量産化を進める新たな木質ボード事業を軌道に乗せたい」と力を込める。  --2024年度の振り返りを
 「決算は増収増益だった。国内市況は、新築住宅着工戸数が減少傾向にあるが、小規模建築物の審査省略制度の縮小、住宅を含む全ての建築物に省エネ基準適合を義務付けた今春の法改正を前に、これを避けようと駆け込み需要が後半にあった。リフォームも大都市圏を中心に堅調だった。非住宅分野のエンジニアリング部門も良く、国内事業は総じて好調だった」
  --海外事業は
 「24年度は伸び悩んだ。米国では潜在的な住宅需要があることは確かだ。ただ、住宅ローン金利が6%台と高止まりしており、国境問題に絡む不透明さもある」
  --事業投資は
 「昨夏にカナダの化粧板メーカーを買収した。ここを拠点に新木質ボード『ディオウッドコア』の製造を始める。既に量産に向けて準備を進めており、26年夏ごろには販売を開始する計画だ」
 「国内では、音響特化型の研究開発拠点となる『音環境ラボラトリー』の建設を進めている。長年培ってきた音に対するこだわりを体現した施設だ。他社との共創も視野に入れ事業拡大を図る」
  --目下の課題は
 「材料コストの上昇だ。総じてインフレ傾向にある。中東情勢の混迷から、石油化学製品の価格が安定しない。併せて懸念するのが、国内の輸送網だ。24年に始まった運送ドライバーの残業時間規制の影響が、これから本格化するはずだ」
  --25年度の展望は
 「非住宅・海外への事業シフトを進める。国内住宅市場は需要が停滞気味であり、建築確認申請を簡略化できた4号特例縮小の影響は小さくない。特に地方の検査が遅れており、実態として、着工の遅れにつながっている」
  --注力する非住宅・音分野は
 「特に非住宅分野の商品開発を進める。複数人でオフィスを共有するシェア型の執務空間が増えている。こうした空間では、どうしても音漏れが生じてしまう。この課題に合わせて、さまざまな吸音・遮音製品を展開している。木の質感を取り入れた製品からインクジェットでデザインにこだわったものまで、幅広い切り口で事業強化を進めている」

【横顔】
 (おくだ・まさのり)新商号「DAIKEN」の号砲が鳴る26日に向け、直接声を届けようと全国の拠点を飛び回る。そんな億田社長を、一部の古株社員は親しみを込めて「おっくん」と呼んでいる。