【関西展望2021】万博、IR、リニア延伸…大型事業の動き本格化 公共工事は堅調に推移 | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【関西展望2021】万博、IR、リニア延伸…大型事業の動き本格化 公共工事は堅調に推移

 “NEXT関西”の行く末を左右する2021年がいよいよスタートした。昨年は新型コロナウイルス感染症の拡大で関西の社会・経済は大きなダメージを被った。建設業界も例外ではなく、建設現場の一時的なストップ、計画の遅延、イベントの中止などさまざまな影響を受けた。21年も先行きが見通せない状況が続いており、民間の発注者らが慎重になっていることなどから設備投資や住宅投資は減少すると見られる。しかし、防災関係など公共投資は一定の規模が確保される見通しで、25年大阪・関西万博に向けた動きが本格化するなど前向きな動きも見込まれる。

着工したうめきた2期工事


 発注者・行政側の年頭あいさつを見ると、近畿地方整備局の溝口宏樹局長が「万博の開催、リニア中央新幹線の大阪延伸などと歩調をそろえ、希望を実現できる社会を目指したい」、阪神高速道路会社の吉田光市社長が「阪神高速道路ネットワークを通じて関西のくらしと経済の発展に貢献できるよう総力を挙げて取り組む」と述べており、URの田中伸和理事・西日本支社長もまちづくりや賃貸住宅の建て替えなどを推進していく方針を示す。多少の遅れはあっても、関西発展を支えるインフラ整備の流れが止まることはない。

 建設企業側も大阪建設業協会の蔦田守弘会長が「万博の招致活動の本格化やうめきた2期工事の着工など明るい話題が見え始めている」との見通しを示し、日本建設業連合会の松崎公一関西支部長が「関西では万博事業や各種インフラ整備事業が着手され、一層本格化する。建設業界はこれらの事業を確実に進めていく責務を担っている」というように、各事業が進んでいく前提で対応を図っていく。

 日本総合研究所は20年12月に公表した「20-22年度関西経済見通し」のレポートで、関西経済は新型コロナウイルス感染症に伴う落ち込みからの回復途上にあるが、設備投資は全国との対比で落ち込みが小さく、関西は25年万博関連の動きが本格化していくこともあり、他地域より早く個人消費が戻る可能性があるとしている。

 同社は関西経済の実質GRP成長率について、20年度マイナス4.8%と想定しているが、21年度には外需の回復と底堅い設備投資、公共投資が下支えすることによりプラス2.8%になるとしている。公共工事請負額も高水準の手持ち工事残高が見込まれるため、公共工事は堅調に推移する見通しを示す。

 万博関連では昨年末に公表された基本計画に基づき、埋立工事や造成工事、会場整備の設計や工事が行われるほか、地下鉄中央線の延伸、此花大橋、夢舞大橋の拡幅といった会場への交通アクセス整備などの関連事業も進められる。

 また、大阪市の夢洲と和歌山市のマリーナシティに計画があるIR(統合型リゾート)は、いずれも20年度に事業者募集がスタートしたものの、新型コロナウイルスの影響などでいったん中断した。その後、昨年12月に国がIRの基本方針を決定したことを受け、21年度から再び動き出すことになる。

 庁舎整備も活発に動くと見られる。国の市町村役場機能緊急保全事業債を受けるには今年度末までに実施設計に着手する必要がある。新型コロナの影響で複数の自治体などが期間延長を要望し、実現の可能性もあるが、いずれにしても各自治体は粛々と事業を進めていく。

 大阪府下では岸和田市が新庁舎のDB事業者の選定を進めているほか、交野市は新庁舎整備の設計を行う。兵庫県下では、県が庁舎と周辺の公共施設を合わせた大規模な開発を計画するほか、明石市は新庁舎の設計を継続する。和歌山県では田辺市がことし新築工事の施工者を決定し、御坊市が21年度後半から新庁舎建設工に着手する見通し。奈良県下では橿原市が設計を継続して進めていく。

 このように、厳しい状況ではあっても一定量の建設需要はあり、さらに新型コロナに伴うライフスタイルや社会の変化で、テレワーク対応などの新たな需要も出てきている。NEXCO西日本の前川秀和社長は「ウィズコロナ・ポストコロナの新しい社会の実現に向けて、DX(デジタルトランスフォーメーション)やETC専用化の検討等、時代の変化に的確かつ迅速に対応していきたい」という。

 また、大阪府建築士事務所協会の戸田和孝会長は「この状況を乗り切って新しい業務形態を構築し、リモートと対面、あるいはバーチャルとリアルの使い分けをいち早く手中に収めれば、新たなステージのスタート台に立つことができる」としている。混迷の時代を乗り切るには、社会の変化にいち早く対応していくことがかぎとなりそうだ。

 また、昨年12月に緊急提言『今こそ立ち上がれ! ミラーリングKANSAI』を発表した建設コンサルタンツ協会の吉津洋一近畿支部長は「提言では大阪・関西万博やリニア中央新幹線新大阪延伸を機に、関西に首都代替機能を整備し、夢洲に関西3空港のゲートウェーを創設するなど、モビリティー革新技術を駆使した関西再生への道筋を示した。ことしも社会に安全・安心、そして夢と希望を与え続ける技術者集団でありたい」としており、建設業界側からもインフラ整備の機運を盛り上げていく取り組みも必要となる。

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