清水建設は、東京都江東区の東京木工場を全面建て替えた。既存施設群計11棟を順次解体・機能移転しながら「来客棟」「工場棟」を新築し、機能を2棟に集約した。建て替えに当たっては、新たに開発した屋根架構などの技術を数多く投入し、木質建築の新たな可能性を具現化した。 =1面参照
東京木工場は、1884年に清水組の木材加工場として現在地に開設。精巧な木工技術は数多くの歴史的建造物にも採用されてきた。戦後の経済成長とともに工場設備を拡充しながら木工事の需要に応えてきたが、老朽・狭あい化から工場としての機能向上や作業・執務スペースの集約による業務効率化に向け、全面建て替えを決めた。
プロジェクトのコンセプトには「木の文化・技術・魅力の発信拠点」を掲げ、第1期工事としてS一部木造2階建て延べ1354㎡の来客棟、第2期工事でS一部木造3階建て延べ3814㎡の工場棟、第3期工事でエントランスとなる「森のギャラリー」や植栽により都市を潤す「体験の森」などの外構工事を行った。
全体で386m3の木材を使用した。工場棟と来客棟では、仕上げ材だけでなく、屋根と耐震壁などの構造体に木材を使用するとともに構造体を木現(きあらわ)しにすることで意匠性を持たせた。
新たに開発した技術のうち、特に目を引くのが、独特のシルエットを描く屋根架構だ。
工場棟の屋根架構(スパン15.9m)は、上弦材に集成材を使った「スリム耐火ウッド張弦梁」、下弦材に鋼材を用い、上弦材の圧縮力と下弦材の引張力により、無柱の大空間を実現。耐火性能のあるスリム耐火ウッド張弦梁構造は、革新的な木質構造として、今後、ロングスパンの建物に積極提案する。
来客棟の屋根架構(スパン10.8m)には、「木質アーチ梁・千鳥継手システム」を採用した。中材とこれを両側から挟み込む側材を千鳥状に配置。クサビとビスのみの簡易な接合ながら、明確な弱点をつくらずに力を伝達する新しい仕組みとした。一般流通材を使用した均一部材の組み合わせにより、さまざまなスパンの木質構造を実現する。
設計を担当した生産・研究施設設計部1部の山田徹グループ長は、今後の工場の方向性について「これまで内装や家具を主軸としてきたが、今後は匠の知恵を生かした構造分野にも事業領域を広げていく」と意欲を示した。
来客棟の展示スペースには、同社が施工した大阪・関西万博の大屋根リングや歌舞伎座の舞台、伊勢神宮外宮神楽殿の木構造のモックアップなどを展示している。
19日の竣工式では、約50人の役職員が働く工場の新たな門出を祝うとともに永続的な発展を祈念して「検尺の儀」を行った。木の伝統技術を連綿と継承していくとともに、新工場を宮大工を祖業とする同社のブランディングにも活用する。
