【全体俯瞰し強み伸ばす】
1日付で駒井ハルテックのかじ取り役に就いた駒井恵美社長は、同社が3本目の事業の柱に位置付ける新規事業に長く関わってきた。自身を「風車製造などに携わりながら主力の橋梁、鉄構事業を、ある意味で外から見てきた人間だ」と説明し、「全体を管理する立場になった。俯瞰(ふかん)して会社を見渡し、現状の市場で私たちが果たす役割、強みを伸ばしていきたい」と話す。今後の経営方針を聞いた。
--事業戦略を
「橋梁事業と鉄構事業については、市場が右肩上がりになるとは想定しづらい。一方、風力発電分野をターゲットにしたインフラ環境事業は、これから需要が立ち上がる時期だ。橋梁や鉄構に比べればまだ小さな市場だが、成長段階にある。国内に5カ所ある製造拠点を生かしつつ、既存の2事業も含め、三つの事業同士を将来へしっかりとつないでいく」
--市場の見方は
「新設橋梁は、需要に対して供給が圧倒的に多く、厳しい状況にある。民間工事やエネルギーインフラ分野で培った経験を生かし、発注者のニーズに寄り添うことで、私たちなりの差別化を進めたい。細くても、長く続けていける提案を行っていきたい」
--需要が高まる保全分野は
「大規模補修工事の経験を今後も積み上げていく。一方、予算確保に困っている自治体の話も耳にする。大規模更新とは違った側面で、地域の橋梁の維持補修に役立てないか、と考えている。コストを抑えながら、どのような維持補修が可能か。地域の気象条件や道路条件によって、発注者の悩みは違うが、われわれが長年培ってきた技術をベースに、最適な提案をしていきたい」
--鉄構事業は
「民間工事のため競争は熾烈(しれつ)だ。物価高騰の影響からプロジェクトが後ろ倒しになる傾向にある。建物の構造は時代とともに変化する。システム化により合理化を図る一方で、システム化できないものを区別し、2拠点あるSグレード工場を活用して、高難易度の注文にも対応していきたい」
--脱炭素化に向けては
「中東紛争でエネルギー供給が混乱している。この事態で、とりわけ影響が大きいのが離島だ。燃料代、それを船で運ぶコストも高騰している。当社が展開する風車は、こうした離島の方々がエネルギーを地産地消できる、マイクログリッド型の中型風車だ。地域の自然を使ったエネルギーマネジメントはますます重要になってくる。当社は台風仕様風車を宮古島に設置した実績もある。今後は引き合いのある離島や海外の独立電源地域等に普及を進める」
--洋上風車タワーの製造ラインを構築している
「風車メーカーの工場認証に向けて設備を構築中だ。日本の洋上風車には、国産のタワーを供給していきたい」
--今後に向けた注力ポイントは
「顧客の情報収集、提案力の強化だ。地域の困り事が入ってくるような『相談窓口』としての役割や、生産部門が知恵を出し、総合的に営業力が高まるよう、各拠点においてその裾野を広げていくことが大切だ」
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(こまい・えみ)1987年3月立教大経済学部卒後、88年10月駒井鐵工所(現駒井ハルテック)入社。97年6月取締役経営企画室長、2021年6月駒井ハルテック取締役兼執行役員、22年6月常務兼常務執行役員、25年6月専務兼専務執行役員、26年4月から現職。兵庫県出身。64年5月13日生まれ、61歳。
【記者の目】
春先は何かと人材確保の話になる。同社の場合、鉄構分野が厳しいという。ただ、技術力は確かだ。国内2拠点は、全国に2000以上ある鉄構工場の上位約1%に入るSグレード工場。「板厚80mmを1パス溶接するなんて、うちしかないのに……」と、価値観が伝わり切らないもどかしさがにじむ。それでも目線は前を向く。「鉄骨ファブの魅力をもっとアピールしたい」。国内のランドマークに数多く携わってきた。その矜持(きょうじ)が伝わってきた。
