日本や海外の建設を取り巻くルールや建設契約について研究、知識共有、実務交流するための専門家団体として「一般社団法人日本SCL」が2月に設立され、6月から本格的な活動を始める。初代会長には、1990年代から長らく英国建設法協会(SCLUK)の日本人唯一の会員として活動した大本俊彦京大特命教授が就いた。大本会長は「法律の専門家が発注者、コンサルタント会社、建設会社、エンジニア、プロジェクトマネジャーなどと、建設契約のマネジメントについて知恵を共有できる場にしたい」と抱負を語った。大本会長と、設立メンバーに名を連ねる大野紳吾システックインターナショナルシニアマネジングコンサルタント、高松レクシー森・濱田松本法律事務所パートナーに活動内容などを聞いた。
SCL(ソサエティー・オブ・コンストラクション・ロー)は、判例や慣習に基づいてルールを決める英国が発祥の専門家団体だ。建設を取り巻く全ての規則や判例、ルールについて、建設技術者や法律の専門家などが専門分野を越えて研究、共有、交流することを目的として活動している。大野氏は、「建設プロジェクトでは本来、法学と工学の両方の知識が欠かせないはずで、その両方の専門家がお互いに理解し合えるコミュニティーとなる」と説明する。
日本では、建設業法だけでなく、民法や会計法、地方自治法、入札契約適正化法などが建設契約に関する法律として存在するが、法律と実際の現場運用の食い違いで紛争が複雑化することがある。「紛争になれば絶対にコストは上がる。工程も遅れる」と大本会長は説く。そうした中で、両方の専門家が理解し合えば紛争を予防できる可能性があるため、大本会長は「建設プロジェクトの紛争を未然に防ぐ専門家委員会であるディスピュートボードの役割を意識して、マネジメントの知識や実践の共有、紛争予防について意見交換、勉強会を開いていきたい」と今後の活動を明らかにする。
国内の建設契約は、請け負いが原則とされ、建設コストの高騰などを背景にコストオン契約なども広がりつつあるものの、責任範囲を巡る紛争を懸念する声もある。外資系の開発事業者が海外の契約約款や工程管理手法の活用を求める場合も、建設会社は実際の建設工事部門とは分離して、契約や工程管理の部分だけ海外事業部門の人材を充てて現場を運営するケースもある。
日本SCLは、こうした事例も含め、海外の建設契約や工程管理の知見を踏まえた国内での在り方などを、専門分野や事業部門を超えて議論する場となり得る。
既に韓国やシンガポール、インドネシアなどアジア各国ではSCLが発足しており、国際会議などを開いている。高松氏は「アジア各国は、英国のルールをそのままを導入するのではなく、各国の文化・慣習に合わせた、紛争にならない建設契約の在り方などについて活発に議論している」と現状を説明する。インドネシアでは公共事業を所管する大臣や会計検査院のトップなどが参加したイベントを開いて、効率的なインフラ整備の在り方を議論しているという。高松氏は、「日本のインフラ整備の良い部分もたくさんある。それをもっとアジアに対してアピールしても良いのではないか」との考えを示す。
日本SCLは現在、設立に関わった20人で構成しており、事前のアンケートでは100人以上が関心を寄せていた。今後、会員募集などを本格的に始め、7月には、会員を対象とした工程管理や遅延分析の在り方についてのウェビナー(実務講座)などを開く予定で、9月には設立記念イベントの開催も予定している。
