【竹中グループ・海外戦略】日本流・設計施工一貫方式で受注 強固な現地化、現地顧客の獲得目指す | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【竹中グループ・海外戦略】日本流・設計施工一貫方式で受注 強固な現地化、現地顧客の獲得目指す

 1960年の米国進出をきっかけに、海外における事業活動を本格化させた竹中工務店グループ。顧客に『最良の作品』と『建築ソリューション』を提供するという経営姿勢は海外事業であっても決して変わることはない。その一貫したスタンスによって築き上げてきた海外事業における礎をどう昇華させていくか。竹中グループの海外戦略を追う。
 アジア、ヨーロッパ、アメリカに現地法人を置く竹中工務店グループにおける海外活動の歴史は古い。
 高度な技術力に裏打ちされた品質を武器に世界各地にネットワークを拡大。空の玄関口となる国際空港や超高層オフィス、高級ホテル、美術館など、いわゆる“インターナショナル・グレード”の多彩なプロジェクトを手掛けてきた実績を持つ。
 都市部を中心にした再開発プロジェクトなど近年、堅調に推移している国内の建築需要だが、人口減少に向き合うわが国の現状を見れば、将来的な需要の鈍化は確実。同社グループにとっても海外事業は今後の成長を左右する重要なファクターになることは間違いない。
 特にこれまでのような日系企業のパートナーとしての展開だけでなく、いかに各国の公的機関や企業など現地の顧客からの受注を増やしていくことができるか。成長戦略としての海外事業へのスタンスは一貫している。
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 実際に佐々木正人社長が「“竹中の品質”を生かすことができるプロジェクトは積極的に営業して受注していきたい」と話すように「(国内だけでなく)海外事業も増やす」という基本的な姿勢が変わることはない。
 とりわけ社会・経済がグローバル化していく中で「これからは世界的にみても日系顧客を中心とする経営から非日系の顧客を中心とした経営を迫られる時代になっていく」と強調。1つの方向性として「日系企業以外の顧客からの受注を増やしていきたい」との思いは強い。
 それだけに日系企業の案件を中心に受注してきた従来のスタンスから脱皮。アジア・ヨーロッパの現地法人を軸に、より一層の現地化・ローカル化に舵(かじ)を切ることで“竹中の品質”を求める現地顧客のさらなる獲得を狙う。
 いかに「より強固な現地化」を推し進めていくか。同社グループにおける海外戦略はまさに次なるステージに入っていくことになる。
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 象徴的な事例の1つが、欧州の現地法人・ヨーロッパ竹中が手掛けた英国の自動車メーカー「ジャガー・ランドローバー」のスロバキア工場プロジェクトだ。
 2018年に竣工したこのプロジェクトでBIMなど最先端の技術を駆使しながら、予算・品質・納期に対する高い対応力を示したヨーロッパ竹中は、ジャガー・ランドローバー社が各サプライヤー(約3000社)の中から顕著な成果を収めた企業に贈る「サプライヤー・エクセレンス・アワード」における非生産購買部門で最高ランク『ゴールド・アワード』を受賞した。
 ゴールド・アワードの受賞は建設会社としては史上初の快挙となる。
 それは顧客に『最良の作品』と『建築ソリューション』を提供する同社グループの“仕事”が現地の顧客から高い信頼を獲得していることの証左。まさにキーワードである「強固な現地化」と「現地顧客の獲得」を体現する代表的な事例となった。

■竹中の人 ピーター・ウルバレック氏
 
 ジャガー・ランドローバーのスロバキア工場プロジェクトでプロジェクトリーダーを務めたヨーロッパ竹中のピーター・ウルバレック氏は、「プロジェクト成功のかぎは顧客とのパートナーシップにある」と強調。パートナーとしての顧客の期待に応えていく1つの手段が「同社グループの強みでもある日本流の設計施工一貫方式だ」と話す。
 実際に発注者であるジャガー・ランドローバーから高い評価を受けたスロバキア工場プロジェクトも「ある建物の請負契約の直前に他社への発注が予定されていた別の建物の設計と施工を打診された。新たに受注できること以上にお客さまが当社を信頼してくれていることに喜びを感じた」と振り返る。
 その言葉どおり「もともと1-2期の工場は他社の設計だったが、単に設計図どおりに施工するのではなく、コストと工期を縮減する設計変更を積極的に提案した結果、(そうした顧客からの信頼が)プロジェクト3期の管理棟の設計・施工一貫での受注に結びついた」という。
 設計と施工を別の会社に分離して発注するのが主流である欧州に浸透していない、いわば日本流の設計施工一貫方式というソリューションは、海外事業における同社グループの大きな武器。「顧客のために設計・施工それぞれの担当者が知恵を出し合い、考え抜く。竹中グループの一員として、このスタイルを貫くことで、これからもお客さまの想いに応えていきたい」と前を向く。
 ウルバレック氏は、竹中工務店ホームページに『竹中の人』として紹介されている。
 
 
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