「未来に先回りして点と点をつなぐことはできない」。米アップルの創業者、スティーブ・ジョブズの名言だ。取材をしていると過去の「点」が不意につながることがある。◆先日、友人との煮物談議が建設現場の課題と重なった。「強火でガンガン煮込めば早くできるが、具材は崩れて味は染みない。弱火でコトコトやるから旨くなる」。料理も工事も短縮してはいけない物理的な時間がある◆コンクリートの養生も若手が一人前になる歳月も、今の「タイパ」重視ではうまくいかない。時間を味方につけてこそ生まれる強度と信頼がある◆われわれの仕事も同じだ。検索一つで情報は手に入るが、現場の空気や人の思いは膝を突き合わせねば見えてこない。点と点をつなぐ奥深い記事を書くためにもじっくり取材に手間暇をかけたい。
