4月1日付で横河ブリッジホールディングス(HD)の新社長に就く中村譲代表取締役兼専務執行役員。経営トップ就任に向けて「チーム意識を高め、グループ会社間の垣根を越えた連携を強化したい」と意気込む。鋼橋工事が新設から保全にシフトする中、同社は2月初旬、プレストレスト・コンクリート(PC)橋梁大手ビーアールHD株の公開買い付け開始を公表した。市場の“地殻変動”にどう向き合うのか。4月からのかじ取りを聞いた。
【グループ間の垣根超える】
--4月の就任に向けた抱負を
「グループに所属する社員全員が成長を実感できる会社にするため、誠心誠意取り組んでいく。そのためには、成長分野に経営資源を投入していくことが最も重要だ。高田和彦社長が進めてきたこの流れを踏襲する」
--伸びしろはどこに
「グループ最大の成長株はシステム建築分野だ。ここに経営資源を投入する。現在はスマートマニュファクチャリング事業として、市場変化、営業戦略、生産計画をデジタルで連携管理する取り組みを進めている。加えてグループの垣根を越えた人事交流、事業会社間を行き来するジョブローテーションなども必要で、成長分野に人的資源も投入していく」
--市場環境は
「確かな需要がある一方、不透明な部分も少なくない。われわれがなりわいとする社会インフラは今、急速に老朽化が進んでいる。直近では埼玉県八潮市での道路陥没事故が象徴的だが、道路や下水道だけでなく、橋梁や港湾施設でも老朽化は顕著だ。維持・保全に関わる仕事は雪だるま式に増えていくだろう。加えて国土強靱化に向けた新しいインフラも必要になる。新設と保全、双方に需要はある。一方で、国の財政的な予算制約は大きな壁だ。積極財政を掲げる高市新政権が発足したとはいえ、さまざまな社会ニーズがある中で、当社グループが関わるインフラ整備だけに一気に潤沢な予算が組まれるとは想定しにくい」
--足元の事業概況は
「今年度については、売上高は期中で下方修正はしたものの、目標付近で着地するだろう。営業利益も予断は許さないが、目標達成に向け取り組んでいく」
--得意とする鋼橋新設は
「受注量の確保には苦労している。大手橋梁メーカーが所属する日本橋梁建設協会の統計によると、第3四半期末時点で国内鋼道路橋新設工事受注総量は重量ベースで5万tに届いていない。今年度は10万tを割り込むことも想定される」
--新技術の導入をどう考えるか
「活用できる部分はあるが、設計や現場の施工計画・管理能力といったエンジニアリング力は、AI(人工知能)では対応が難しい面もある。われわれがつくる橋梁は一品一様であり、設計から施工までノウハウが要る。『橋梁業界はロボット化やAI化が遅れている』といわれることがあるが、それは私たちが受け継いできたエンジニアリング力の高さを示すものと考えている」
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(なかむら・ゆずる)1984年3月山口大工学部土木工学科卒後、同年4月横河工事(現横河ブリッジ)入社。2019年6月横河ブリッジ常務、22年4月横河ブリッジHD執行役員兼横河ブリッジ取締役兼副社長執行役員、24年6月横河ブリッジHD取締役兼執行役員兼横河ブリッジ代表取締役兼社長執行役員などを経て、25年6月から現職。島根県出身。61年5月14日生まれ、64歳。
【記者の目】
「HDと事業会社の創業年数を足すと、おおよそ320年。長い歴史は先人たちの挑戦、奮闘努力の遺産だ。これを背負い、未来へつなげる。責任の重さは、半端なものではない」。ゆっくりとした語り口の中に、静かな覚悟を感じた。グループを含めて社員約2000人。建設業の潮目が新設から保全・改修へと移る中、日本を代表する橋梁メーカーは中村新体制でどう変わるのか。間もなく出港の汽笛が鳴る。
