【過度な期待には警鐘】
近年、深層強化学習などによりロボットの開発スピードが加速している。こうした中、日本の建設業界でも四足歩行ロボットなどを現場で活用する動きが出てきた。さらに他産業では、ヒューマノイドロボットの活用を模索する動きも活発化してきた。建設業界はこの動きをどのように捉えればよいのか。世界のロボット開発をリードする中国・杭州のUnitree Robotics(ユニトリー・ロボティクス)のIrving・Chen(アーヴィン・チェン)ゼネラルマネージャー(APEC)らに話を聞いた。
世界的に注目を集めるヒューマノイドロボットについて、チェン氏は建設業界における現状を「現段階では明確な活用事例はなく、概念実証(PoC)からパイロット運用の段階にある」と指摘する。同氏は、建設現場という複雑な環境においては、現時点では四足歩行ロボットの方が適しているとの見解を示す。
「四足歩行ロボットは移動プラットフォームとして成熟しており、階段の昇降や障害物の通過など、複雑な地形に対応するための、より安定したハードウエアだ」と述べ、ヒューマノイドの本格導入はまだ先になるとの見方を示した。
ユニトリー・ロボティクスを輸入代理するなど、日本の現場を熟知するTechShare(東京都江東区)の重光貴明代表取締役も、過度な期待に警鐘を鳴らす。「ヒューマノイドのような、人間と同じような万能なことができるロボットへの期待が高いが、それは相当先の話だ」と断言する。
その理由は、物理世界を動かすフィジカルAI(人工知能)特有の困難さにあるという。同氏は「フィジカルAIはコンピューターが直接コントロールできないアクチュエーターなどの物理的なものを動かすため、必ずしもうまくいかない。わずかなノイズがトラブルにつながり、ハードウエアも壊れやすいなど、すぐに解決できない問題もある」と、シミュレーション通りにはいかない現実を指摘する。
一方で、決して悲観しているわけではない。重光氏は、建設業界の反応が変化していることを感じている。「第1ラウンドで『その程度か』と思った人たちが、今の進化した歩行技術を見て『第2ラウンド』の評価を始めている」と変化を語る。
今後の焦点は、技術そのものよりも「どう使うか」に移っている。重光氏は、ロボットに全てを任せるのではなく、人間側の歩み寄りを提案する。「ロボットが自律的に人間を避けるのを期待するのではなく、工場のように現場に『専用道路』や『交通ルール』を整備すべきだ」と強調する。具体的なユースケースとしては、「職人が多く移動する昼間ではなく、夜間の進捗(しんちょく)管理や検査をロボットが勝手に行う世界は現実的だ」と具体的な導入案を挙げた。
チェン氏は、今後5年から10年でAIがフィジカル・インテリジェンス(物理的知能)へと進化し、ロボットはその器になると予見する。その上で、日本のパートナーに向けて次のように呼び掛ける。「われわれは日本の建設業界で探索できるシナリオをもっと知りたい。単なるビジネスを超えたフレンドシップを築いていきたい」
