災害対応の成否を握る道路啓開作業。この妨げになるのが、離れた陸同士をつなぐ橋の損壊だ。宮地エンジニアリングは、こうした場面でスピード施工できる緊急仮設橋「MLブリッジ」を開発し、14日に試験施工した実物を公開した。リースの山留めH形鋼を橋桁に転用する仕組みで、一般流通部材で組み上げる点が特長だ。
「名称のMLは、モバイル・ラダーの略称。簡単に運べて、はしごのように架けられる」。開発チームの神野夢希さんが、実機を前に紹介した。
組み立てではまず、片岸から対岸に向かって山留めH形鋼を階段状に重ね上げ、高力ボルトで留める。これが主桁の役割を果たす。桁先端が対岸を越えた時点で、後方でバランスを取っていたカウンターウエートを徐々に落とし、橋桁を対岸へ着床させる。繊維強化プラスチック(FRP)製の覆工板を敷き、ガードレールを設置。両岸に乗り上げ用のスロープを土のうなどで間に合わせれば完成する。
地震や河川の氾濫では橋梁が損壊・消失し、村落が孤立するケースが少なくない。ここで使われるのが、短期間で架けられる緊急仮設橋だ。
この分野を巡っては、ユニット型や専用システムの開発も進んでいる。一方で今回は、市町村など規模の小さい基礎自治体レベルでの普及を想定し、自治体側がコストを割いて機材をストックしなくて済むよう、全国どこでも手に入る「山留め材を使った仮設橋」というコンセプトで開発が始まった。
主要部材は重仮設リース市場で流通しているため、地場の建設会社がそれぞれの地域で部材を入手して施工できる。万が一の際、“地域の力”で橋を架けられる仕様にこだわった。
今回の試験施工はヒロセ稲敷工場(茨城県稲敷市)で実施した。3月12日から4人作業で組み立てに着手し、対岸に見立てた台座まで20mスパンを実働10日間で施工した。実機を一般公開した14日には、橋の上を4tユニック車がテスト走行し、問題なく渡りきった。
今後はこの結果をベースに施工期間の短縮法、設置規模の延長などを検討する。開発担当の吉元大介DX推進本部長は社会実装に向けて「地域建設業や自治体への認知活動にも注力する」と話した。
現場にはこの日、宮地エンジニアリングの奥村恭司社長も視察に訪れた。実は開発プロジェクト発足当初、技術本部長として企画の責任者だった。当時を思い出して「感無量だ」とこみ上げる思いを口にした。
