【KPMGコンサルティング 執行役員パートナー 幸昇氏/内製から外部知の活用へ/経営DXで全体最適】
近年、建設業界で世界4大会計事務所を母体とするコンサルティングファーム「ビッグ4」の存在感が高まり、その役割も質的に変化している。これまで公共事業の支援業務などで力を発揮してきたが、行政支援の高度化に加え、社会課題の複雑化を背景に、公民双方で関与の領域は一段と広がっている。一方、AI(人工知能)の進展や地政学リスクの高まりなどを背景に、建設業界は自らの課題を業界内だけで解決することが難しい局面に入りつつある。
こうした中で、彼らは建設業をどのように見ているのか。連載では、各社グループの担当者へのインタビューを通じ、業界全体の構造的課題から、リスク対応、PPPなど個別領域に至るまで、多角的な視点から建設業の現在地と今後の方向性を探る。外部の専門的知見をいかに取り込み、変革につなげるか。その示唆を提示する。初回はKPMGコンサルティング。
建設分野で「ビッグ4」の存在感が増している背景について、KPMGコンサルティングでインフラセクターを統括する幸昇執行役員パートナーは、総合系コンサルの軸足が経営とITにある点を挙げる。建設業界はこれまで、CADや基幹システムを自前で扱える理系人材が多く、「外部に頼る必要がなかった」と、同氏は30年にわたる業界の歩みを振り返る。
一方、近年は深刻な人材不足を背景に、「自社で担うコア」と「外部に委ねる領域」を切り分ける動きが加速している。製造業などで培われた業務プロセス改革の知見を持つ総合系コンサルの出番が広がる中、建設コンサルと総合系が担う領域は徐々に重なりつつあると同氏は分析する。
幸氏が強調するのは、建設コンサルが担う現場レベルのDX(デジタルトランスフォーメーション)と、総合系が主戦場とする業務・経営レベルのDXの射程の違いだ。個別作業は建設コンサルの専門性が生きる一方、それらを束ねて経営へ落とし込む全体設計は手薄になりがちだ。
こうした役割の違いを踏まえ、「われわれは物事を前に進めるプロ集団」と同氏。スマートシティのように複数プレーヤーが関与する案件で、各所の調整を担う「事務局機能」の価値を強調する。目標を定め、工程に分解し、必要リソースを精査する。
「特にプロジェクト計画書の作成に全力を注いでいる」とし、目標やスケジュールが曖昧な計画も少なくない中、この工程を客観性で補完する点に真価があると指摘する。
同社では生成AIの活用提案が拡大している。サイバーセキュリティーでも単なる防御にとどまらず、「攻撃されてしまった場合でも事業をいかに継続し、業務の生命線を守るかが重要になる」と力を込める。製造業で顕在化したリスクを踏まえ、同社は事業継続計画(BCP)まで踏み込んだ実戦的な支援を強化している。
官公庁・自治体領域では、デジタル庁のモビリティー実証や仙台、さいたま両市での取り組みに加え、沖縄県名護市では包括連携協定に基づき社団法人の設立や拠点整備を推進。「補助金ありきでつくって終わり」ではなく、地域で自走する事業モデルの構築を官民一体で模索する。
建設業が受発注中心の「ワンタイム型」から、インフラのライフサイクル全体を視野に入れた「継続収益モデル」へ転換する中、社内スキルのミスマッチも顕在化する。重複入力などの非効率な業務を棚卸しし、AIも活用しながら全体最適で省力化を進めることが一段と重要になるとみる。
外部知見の役割は、壮大な構想の提示にとどまらず、現場の視点を変えつつ、まず「回る形」へ落とし込む実装力にあると力説する。
