【個社利益より生産性】
9月に発足から5年を迎える建設RXコンソーシアム。当初16社だった加盟企業は、約320社まで拡大した。今では建設業界やその周辺領域にとどまらず、他業界からも注目を集めている。こうした中、3代目の会長に就任した清水建設の原田知明専務執行役員建築総本部生産技術本部長は「個社の利益より生産性を高め、業界全体を底上げしたい。それがわれわれの使命だ」と語る。今後の運営方針について聞いた。
--抱負は
「昨年4月に副会長として初めて参画したが、競合するライバル同士が共通の危機感を抱き、技術で協力し合う姿に『先を行く思想』を感じた。現場の指揮を執る監督者としてのゼネコンに対し、施工を担う技能者は特定の企業に縛られず、多様な現場を巡りながら働いている。だからこそ、1社で技術を囲い込むのではなく標準化することが不可欠だ。人手不足や高齢化という喫緊の課題に対し、共通のツールで効率よく働ける環境を整え、業界全体で好循環を生み出していきたい」
--一般社団法人化について
「近く正式に法人化する予定だ。組織が大きくなる中、責任の所在を明確にし、社会的な地位を確立する必要があった。法人化により補助金申請や公的な認定を受ける体制が整う。これまでの“手弁当”の活動から脱皮し、胸を張って活動できる公的組織となることで普及の裾野をさらに広げたい。補助金を活用して実証実験を加速させ、生産性向上に寄与したい」
--初の「施工現場出身」会長として、そのキャリアをどう生かす
「数十人の現場から数千人規模の現場まで指揮してきた経験がある。アナログな時代を経験したからこそ、今の『垂直に近いスピード』で進むデジタル進化には驚いている。異業種の技術は、建設現場向けにあと一つの工夫が必要な完成度で届くことが多いが、そこが面白い。現場を熟知するわれわれが関与し、実情に合わせて残りの部分を埋めていく『スパイラルアップ』こそが共創の醍醐味(だいごみ)だ」
--コンソーシアムで検討している注目技術や取り組みは
「例えば、遠隔地と現場をつなぐコミュニケーション技術には大きな可能性を感じている。離島などの現場と事務所をつなぎ、移動時間をゼロにする効果や利便性には社内でも驚きの声が上がった。昨今の酷暑対策では、最新の冷却装備などを各社で使い比べ、忌憚(きたん)のない意見をメーカーにフィードバックしている。現場の生の声を基に製品を改良し、完成度を高めていきたい」
--若手入職者の確保やブランディングについては
「ロボティクスやAI(人工知能)、重機の遠隔操作といった近未来的な技術を積極的に発信し、『クールな建設業』というイメージを確立していく。展示会やアワードなどを通じ、スタートアップ(振興企業)の技術を現場に実装させる機会を増やし、建設業の持つ魅力を発信したい」
* *
(はらだ・ともあき)1988年3月九州芸術工科大大学院芸術工学研究科生活環境専攻修了後、同年4月清水建設入社。2021年4月執行役員千葉支店長、24年4月常務執行役員千葉支店長、25年4月常務執行役員建築総本部生産技術本部長などを経て、26年4月から現職。自他共に認めるワイン好きに磨きをかけ続けている。熊本県出身。62年5月1日生まれ、64歳。
◆記者の目
長年、施工畑を歩んできたたたき上げ。現場を熟知しているからこそ、新技術を見極める“目利き”として確かな視点を持つ。組織運営で重視するのは「俯瞰(ふかん)して事実を伝えること」という。技術のメリットだけでなくリスクも透明化し、忖度(そんたく)なく公平に評価する姿勢は、競合他社を含む会員企業からの信頼にもつながるはずだ。建設RXの次なるステージを担う、そのかじ取りに注目したい。
