【産官学連携し技術力向上】
沿岸技術研究センター(CDIT)の新理事長に中崎剛氏が就いた。沿岸域や海洋に関する研究や波浪予測情報の提供、技術基準確認審査などを通じて、港湾・空港分野の技術力向上を目指す。気候変動の対応や浮体式洋上風力発電技術の確立など新たな課題も浮上する中で、CDITとしてどのように下支えしていくのか中崎理事長に今後の展望を聞いた。
--就任の抱負を
「第一線の研究者、技術者が最先端技術を持ち寄り、学際的かつ創造的な技術開発に専念できる環境を整備することと、沿岸域や海洋、防災に関わる日本全体の技術力を高めることを目的にCDITは設立された。その趣旨にのっとり、インフラの信頼性を向上させることがCDITに求められている使命だと思っている。CDITの立ち位置を生かし、産官学のネットワークを通じて使命の達成を目指す」
--CDITの立ち位置とは
「国から調査研究を受託し、いわば国のかかりつけのシンクタンクとして役割を果たしている。民間に対しても、港湾施設の技術基準確認審査や、新しい工法、構造材料を開発した際の技術評価を行っている。海洋港湾構造物の設計士や維持管理士の資格試験の資格習得後の研修も実施し、人材育成を支える」
「大学や研究機関とは共同研究のパートナーとなるほか、有識者委員会を通じて一緒に調査する場合もある。研究成果をいかに現場に生かしていくかということに重点を置いている。そのことは学識者の皆さんにとっても非常に重要な観点だと思う。このように産官学との関係がわれわれの仕事の要となっている」
--洋上風力発電施設への支援は
「洋上風力については、これまで着床式の調査研究を重点的に取り組んできた。浮体式は海底につなぎ止めるアンカーに関する研究を進めている。耐震性を評価する技術手法の開発に向け共同研究も進めている。浮体式は実証が始まった段階だ。技術基準の確認審査も実証的な試験を行いながら進めなければならない」
--港湾インフラの現状の課題とCDITの対応は
「気候変動によりインフラへの外力が強くなってきている。老朽化への対応として頻繁に点検し早期に維持補修を進める必要があるが、気候変動の影響を踏まえた改良や更新も視野に入れなければならない。インフラの信頼性を保つ観点から、気候変動と老朽化の対応は難しくなってきている」
「その対応で、波浪データの提供などわれわれが行っている気象予報のレベルを上げていくことが一つある。また、これまで進めてきた維持管理関係の研究でたまってきた老朽化対応のノウハウを生かし、全国の維持管理のレベルを高めたい。施工や維持管理の現場に配慮した設計を実現させるなど、インフラのライフサイクルの各工程で得られた研究成果をフィードバックすることで作業の効率化を促していく」
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(なかざき・たけし)1990年3月京大大学院工学研究科修了後、同年4月運輸省(現国土交通省)入省。2023年7月中国地方整備局長、24年7月官房技術総括審議官を経て、25年4月に退官。退官後は、三井住友海上火災保険顧問や沿岸技術研究センター審議役を務め、26年6月から現職。大阪府出身、62歳。
■記者の目
国交省時代から主に港湾畑を歩んだ。港湾事業の魅力を聞くと、港湾が世界と直接つながっている場所であることとともに、過酷な自然条件や作業船を使った施工など技術的な制約が多いことを挙げ、「だからこそ、この道を究めることにやりがいがある」と話す。今日まで多くの専門家の経験や技術によって港湾事業は発展してきた。CDITの理事長として、専門家がさらに活躍するよう精力的に支援に取り組むことを期待する。
