【「舞台」としての公共空間/建築家・津川恵理氏が提示】
東京・渋谷の公園通りが、熱狂に包まれた。14日、回遊型プロジェクト「DIG SHIBUYA2026」の一環として、大規模な交通規制を伴う社会実験が実施され、まさにサイトスペシフィック(その地域の特性)な場が誕生した。空間デザインを担ったのは建築家の津川恵理氏(ALTEMY代表)。津川氏が、2024年実施の「渋谷公園通り2040デザインコンペ」で最優秀賞を獲得した当初から掲げてきた構想が、公共空間である道路の上に鮮烈な「都市の劇場」を現出させた。
今回の社会実験は、一過性のイベントにとどまらず、渋谷公園通り協議会と津川氏が40年の全面運用を見据えて継続的に進める、長期的な街づくりプロセスにおける重要な検証の場である。道路という無機質なインフラを、演じる者と見る者が交錯する空間へと再定義する試みだ。津川氏は「これは単なる入り口(始まり)ではなく、24年のコンペ以来、協議会と毎年ステップを積み重ねてきた継続的な関わりの中にある一歩」と地域との合意形成の重みを強調する。
コンペ時のテーマ「触れる都市のマチエール(素材感)」を起点に、今回の実験では、さらに踏み込んだ「テアトロン(舞台化)」という概念が実装された。会場ではパルコがキュレーションした多彩なノンバーバル(非言語)・パフォーマンスと、津川氏が設計したハードの空間構成が高度に融合。路上のあちこちで言葉を介さない身体表現が放つエネルギーが爆発した。それは、かつて寺山修司や唐十郎らが路上を劇場に変貌(へんぼう)させてきたアングラ演劇の精神、そしてその後のパルコ文化へと続く渋谷の表現の系譜を、現代の空間デザインとして昇華させた瞬間だった。
第一声として「こうした熱狂する場が生まれたことが何よりうれしい」と、スマートフォンで撮影した動画を見せながら津川氏は笑顔で語った。「空間とコンテンツが一体となったとき、街の歴史がよみがえる。構想が一つの形になった」とその手応えを語る。
路上に設置された空気膜構造による大型ソファーでは、多くの市民が休息を楽しんでいた。家族で訪れた母親は「大人も子どもも一緒に座れて楽しい。イベントを知って久々に公園通りを訪れた」と話し、しつえられた空間が新たな来街動機を生んでいることも浮かび上がった。
ハードが場所をつくり、ソフトが命を吹き込む。その共鳴が生んだ熱狂は、将来の常設化を見据えた公共空間の在り方を再定義する確かなマイルストーンとなった。建築が都市のアイデンティティーを再構築していく、そのダイナミズムを強く印象付ける実験となった。
