【事業ポートフォリオを強く】
2025年4月に創立100周年を迎えた三機工業は、101年目に入るタイミングで社長交代を決断し、ルーツである三井物産の出身者で、成長の道筋を示す中期経営計画の策定を主導した名古屋和宏氏を新社長に起用した。「当社の成長のために、残すべきところは残し、変えるべきところは変える」と強調し、「不変と進化」を基本姿勢に示す名古屋新社長に、経営方針を聞いた。
--就任の抱負は
「諸先輩が積み上げてきた強みを継承していく。エンジニアリング会社として真面目に技術と向き合い、お客さまが求めるものを誠実につくり上げてきた。それによって信頼を得て、次の案件のお話をいただく。そのサイクルを続ける。そこは不変だ」
「一方で、時代が相当早く動いている。過去に正しかった経営判断も、変えるべきものが出てくるだろう。そこは進化させたい。具体的には、主力の建築設備事業だけでなく、プラント設備など他の事業も伸ばし、事業ポートフォリオ全体を強くする。それによって会社全体を成長させ、企業価値を上げていく」
--進化はどのように取り組むか
「当社単独で行うよりも効率的に事業を伸ばせるのであれば、パートナーと組む。その手法としてM&A(企業の合併・買収)を積極的に活用する」
「加えて、社員の挑戦する気概を呼び起こさせたい。当社は100年前に旧三井物産機械部の人間が立ち上げたベンチャー企業であり、チャレンジングスピリッツは脈々と受け継がれているはずだ。昨今は人手不足と忙しさから、目の前のお客さまの要望に応えることで精いっぱいの部分があったものの、新たな取り組みや新しい事業を興すことを諦めてはいけない」
--建築設備事業の営業・受注戦略は
「従来のお客さまをしっかりと守っていくことが基本だ。同時に、利益率が多少落ちたとしてもランドマークとなる案件に挑戦する。お客さまの重要度や利益率の高さだけで仕事を選ぶのではなく、社員のモチベーションが上がるように後世に残る案件にもしっかり対応していく」
--海外事業の戦略は
「日本の人口が減るのは明らかである中、国内を主戦場としたままでいいのかという課題意識がある。現地法人を置く中国とタイに加え、M&Aを活用しながら他の国にもフットプリントを広げる」
「M&Aの対象とするパートナー会社は、基本的には同業で、かつ親和性があり、文化も近く、『組んでよかった』『成長できた』と互いに言い合える会社を探していく」
--協力会社の支援方針は
「協力会社は重要なパートナーと捉えている。だが、事業承継に課題があり、われわれも対応していく必要がある。別の会社と一緒になることで事業を継続できるのであれば、必要に応じて当社が資金的にバックアップすることはいとわない。採用や育成の支援も含め、事業継続に必要な支援は惜しまずに取り組む」
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(なごや・かずひろ)1991年3月東大工学部電子学科卒後、同年4月三井物産入社。2021年2月モビリティ第二本部参与、23年4月三機工業常任理事デジタル改革推進副本部長、24年4月同社執行役員コーポレート副本部長、25年4月同社常務執行役員コーポレート本部長、25年6月同社取締役兼常務執行役員コーポレート本部長を経て、26年4月から現職。栃木県出身。68年4月21日生まれ、57歳。
◆記者の目
三井物産でよく使われる「人が仕事をつくり、仕事が人を磨く」を座右の銘にしている。仕事をつくり上げる過程で自分自身も成長できるという意味で、「社会人人生を振り返る中で実感する場面が多い」と話す。その結果、相手の信頼を得られ、さらなる期待をかけてもらえる。名古屋社長が三機工業で「不変」とすることと重なる部分があり、同社には三井グループのDNAが流れていると改めて感じた。
