【戦える会社に進化】
1日付で大豊建設の新社長に益田浩史氏が就任した。地下土木工事など得意技術の深化と高収益化によって、「大手を含め他社に引けを取らない特色あるゼネコンへ進化させることが使命だ」と意気込む。森下覚恵前社長が整えてきた制度・技術・人材の基盤を引き継ぎ、「“戦える会社”として次のステージに進む」と力を込める益田社長に事業の見通しや戦略を聞いた。
--事業の見通しは
「資材高騰などの厳しい局面を乗り越え、2026年度の連結売上高は約1400億円を確保でき、利益面でも前期を上回る業績を見込む。ただ、業績回復を手放しで喜んでいるわけではない。(建設需要の増加など)時代の追い風が業績を押し上げている側面もある。市況が好調な今だからこそ、備えを怠らず、安定した本物の実力を持つ会社へと成長させていく」
--注力事業の展開策は
「ニューマチックケーソンやシールド工法など得意工種に経営資源を集中させる。特に下水道リニューアルは有望分野だ。老朽化対策が社会的に急務となる中で、10年、20年後を見据えた布石を今まさに打っている。ウオーターPPPにも挑戦しており、地元企業との協業など戦略的に強化していきたい」
「技術開発も早急に取り組まなければならない課題だ。ニューマチックケーソンの遠隔自動施工やシールドのデジタルツイン管理など、培ってきた技術力とDX(デジタルトランスフォーメーション)の融合を加速させ、現場管理職員を支援する」
--アライアンス・M&A(企業の合併・買収)戦略は
「麻生グループとは環境配慮コンクリートの研究、共同開発で検討を進めているほか、グループ傘下の建設企業とも連携関係を構築中だ。M&Aに関しては規模を追うのではなく、現状の事業を補完できる企業をターゲットとしたい。例えば、下水道管路の調査・診断など川上の事業分野を取り込むことでさらなる成長につなげる」
--人材戦略は
「現場での誠実な姿勢とたゆまぬ努力の積み重ね、そしてその技術力で信頼をさらに積み上げていくスタイルこそが当社最大の財産であり、それを担う人材はコストではなく資本だ。採用の強化はもちろん、技術伝承が重要となることから、経験豊富な所長に次代を担う若手を配置するなど、現場でのOJT(職場内訓練)に取り組んでいる」
「現場での成功体験より失敗体験の方が多くの学びを得られる。若手は図面ではなく自分の目で確かめ、耳で声を聞き、手で仕上がりを感じ、振動や匂いにも気付いてほしい。五感をフルに使って積み重ねた経験こそ、AI(人工知能)にはまねできない技術者の力となる」
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(ますだ・ひろし)1981年3月鹿児島大工学部卒後、同年4月大豊建設入社。2020年4月執行役員大阪支店長、21年4月常務執行役員大阪支店長、22年4月常務執行役員土木本部長海外部門担当、同年6月取締役兼常務執行役員土木本部長海外部門担当兼技術研究所担当を経て、26年4月から現職。趣味は格闘技で、空手のキャリアは55年になる。転勤と共に各地の道場で腕を磨いてきた。鹿児島県出身。59年2月17日生まれ、67歳。
◆記者の目
東日本大震災の発災から半年後に東北支店に赴任。驚くような惨状を目の当たりにしたが、完全に復活した姿を見て「建設業の力は素晴らしい」と改めて感じたという。「工事に文句を言う人はおらず、よくやってくれているという言葉をもらった。官民一つになって復興に向かった」と振り返る。座右の銘は世阿弥の『初心忘るべからず』。「現場一つひとつが初めての挑戦であり、社長という立場も私にとって『初心』だ」と語る。慢心せず、しかし臆せず、会社の成長へ歩みを進める。
