清水建設は、長崎市との連携協定に基づき、端島炭鉱(軍艦島)に56年ぶりとなる新たな建築物として研究拠点「72号棟」を建設し、16日に報道機関に公開した。外洋の厳しい環境下で、施設整備技術の開発や特有の環境への適用性を実証する拠点として活用されるほか、災害時には観光客の一時避難所としての役割も担う。長崎市の渡部貴徳副市長は、同社に謝意を示した上で、「保存や整備、公開活用の新たな可能性を切り開く」と期待を寄せた。
清水建設は、自然災害で孤立した地域を想定した「アクセス困難で不十分なインフラ環境下での施設整備・運用技術の開発」に取り組んでいる。72号棟は、こうした取り組みを具現化した。
木造平屋建てで、建築面積は52.44㎡、高さ3.11m。特徴の一つが、全国どこでも入手可能な一般流通木材を採用した点だ。
柱・梁の組み立てから地震時の水平力を負担する外壁(構造用合板パネル)の設置に至るまで、簡易な工程で組み立てが可能となっている。史跡内では地盤の改変ができないため、建物外周に配置したウエートにより、強風時などに建物の転倒を防ぐ機構を採用した。
電力は、新たな電源システムを採用し、端島特有の環境に対する適用性を確かめる。その初弾が舗装型太陽光発電システムの検証だ。地面に敷設した35cm角の発電ユニット(パネル)と可搬型蓄電池を接続した。衛星通信サービス「スターリンク」も導入し、通信環境を改善。現地における調査研究活動の高度化・効率化を図る。
長崎市管理の新型トイレも設置。初期投入した洗浄水400リットルで約2500回利用でき、汚物を沈殿させて上澄み水を循環利用する仕組みで、化学溶液による滅菌や脱臭、減容化効果を検証する。
プロジェクトリーダーを務める清水建設生産技術本部の香田伸次特別理事は「これほど劣化が進み、過酷な環境下に置かれた施設は例がない。生きた教材として有効に活用できる拠点にしたい」と力を込めた。
