【現地所長、2人の原点 徹底された品質管理/規律重視の“日本式”に学び/高い要求水準が大きな刺激に】
東洋建設のフィリピン現地法人「CCT コンストラクターズ・コーポレーション」の成長を支えるのは、社員の9割以上を占めるフィリピン人たちだ。現場を預かる同国出身の技術者たちは、日本のゼネコンが実践する現場管理をどう学び、受け継ごうとしているのか。2人の作業所長を訪ねた。
フィリピン・バタンガス州の工業団地。貸倉庫の建設現場で図面を広げていたのが、アレクサンダー・パカダ作業所長だ。CCT勤続14年、ルソン島北部出身で土木工学を専攻した。現場で6社の協力会社、200人の作業員を束ねる。
「入社を決めたのは、日本式の施工管理と品質管理を学べると確信したから」という。入社間もない頃、日系メーカーの工場を建設する現場で、厳しい安全・品質管理に触れた。「日本式のプロジェクトは計画が非常に細かく、何事にも管理や記録に対する規律が強い。こうした点はフィリピンが見習うべき点だ」と率直に語る。
具体的には、施工計画の徹底的なつくり込みを挙げる。工程ごとのチェックシートを用意し、使用材料は全てクライアントの承認を得てから施工に着手する。毎週の安全パトロール、日次の調整会議と現場の点検。こうした細密な確認・調整作業を一つひとつ経験の中で自身に取り込んできた。
その後、日本での1年間の実地研修も経験した。東洋建設は2014年から毎年、CCTの建築技術者2人を日本の建築現場に受け入れている。配属された現場では「日本の現場の方が建設機械の種類も数も多く、それらをうまく活用して合理的に施工を進めていた」とし、それに合わせた施工技術やより高度な品質管理を目の当たりにした。帰国後は、次第に大型案件を任されるようになり、今年1月、作業所長に昇格した。
現場では毎朝6時45分から朝礼が始まる。キリスト教式のお祈りの後、フィリピン式の体操と危険予知活動で1日の作業が動き出す。安全巡回は毎日、安全会議は毎週行い、無事故を維持して進捗(しんちょく)率は50%を超えた。現場の服装や作業手順も安全第一を徹底するだけに、友人からは「CCTは他社より厳しい」と言われるという。
一方、車で1時間ほど離れたローカル企業・FOODSPHEREの食品加工工場の現場では、クリストファー・センティリヤス作業所長が内装工事の追い込みを指揮していた。05年に入社、勤続は20年を超えた。地元の建設企業から転職したきっかけを「CCTに入ったのは偶然で、第1志望ですらなかった」と明かす。
海外就労を目指して退職したところに、CCTで勤めていた旧友の縁で入社に至った。配属されたのは米国半導体メーカーの現場だった。当時のCCTでは最大規模の現場で、米国系の施主は品質に非常に厳しかった。「徹底した品質管理やクライアントの高い要求水準から大きな刺激を受けた。あれが私の原点だ」と振り返る。
CCTの強みは、経験を積んだ現地スタッフを責任者に据える仕組みにある。日本語対応や極めて厳しい仕様が求められる案件を除き、日本人は現場のサポートに回ることが多い。現地幹部の多くが日本での研修経験者だ。
センティリヤス氏は、会社の成長を現場の規模で実感していると話す。「入社した頃は1億ペソ(現在レートで約2億6000万円)の工事で大喜びだった。今の現場は7億ペソ。当社では30億ペソの現場を預かった所長もいる。もっと大きなプロジェクトに携わり、もっと良いものをこの国に残したい」と笑顔で語った。
今では若手を指導する立場に。大切にしているのは「経験を分かち合うこと」だと打ち明ける。安全へのこだわりがクライアントの信頼につながる。それだけに「徹底した管理の大切さを伝えたい」と強調する。現地企業のプロジェクトも請け負うようになった同社の現在を「能力が備わり、信頼されている証拠だ」と喜びをもって受け止めており、さらなる成長に向けた姿勢も示す。
