【世界トップ層の利益率に】
フジテックの社長に社外取締役から市村雄二氏が就いた。日本の名だたる製造業で要職を歴任し、海外事業やDX(デジタルトランスフォーメーション)、事業変革で豊富な実績を持つ市村氏は、利益率向上への強い意欲を示して「フジテックをエクセレント・カンパニーにする」と意気込む。これまでの経験・ノウハウを生かし、スウェーデンの投資ファンド、EQTの傘下に入った昇降機専業メーカーの成長をどのように描くのか。経営方針を聞いた。
--就任の抱負は
「日本の製造業を複数社経験し、社会人になってからの年数は日本と海外のオペレーションが半々だ。現地生活などを通じた海外オペレーションを行う中で、日本の製造業のポテンシャルの高さを実感した。だが、多くの企業はポテンシャルを生かせていない。その理由には『テクノロジーを使い切れていない』『グローバルに成長できていない』『イノベーションを起こせていない』『変革のマネジメントができていない』の主に4点が挙げられる」
「フジテックも同様で、伸び代がある。業績は史上最高益を更新する勢いがあり、非常に好調だが、社会や顧客に価値をより提供できればもっと稼げる。グローバル企業に仕立て、エクセレント・カンパニーにする。まずは、昇降機業界の世界トップであるオーチスやコネに売り上げ規模で及ばなくても、利益率では肩を並べられるよう利益率向上を目指す」
--その具体の取り組みは
「昇降機のビジネスモデルは非常に息が長く、新設、リニューアル、保守・リペアの三つが仕事の柱となる。新設はかなりできていて、引き続き技術力やデザイン力を生かしてしっかり対応していく。まだまだやれることがあるのはリニューアルと保守・リペアだ。各国・地域に面で取り組みを広げながら、二つの領域に投資をしていく」
「具体的には、他社製のリニューアルにも積極的に取り組むことで、保守・リペアの仕事の獲得につなげる。フルリニューアルが多い日本に対し、海外では巻き上げ機やモーターなど部分的なニーズがある。きめ細かく市場を分析しながらパッケージ化して狙っていきたい。保守・リペアは人手不足の分野だ。デジタル技術、ロボット、AI(人工知能)の積極的な活用や多能工化などを進めることで、効率性を高め、利益の源泉にする」
--日本の昇降機市場をどう見ているか
「市場全体のエレベーター新設台数は数年前から緩やかに落ちている。それでも、高層ビルや地下空間などの建設があり、需要は見込める」
--新たな取り組みは
「当社は垂直移動サービスを提供しているため、画像やセンサーで人の動きに関する各種情報を保有しているものの、昇降機のメンテナンスでの使用にとどまっていた。商業施設の会社など他社にとっては喉から手が出るほど欲しい情報だ。さまざまな企業とデータ・情報活用などで連携し、新しい価値をつくっていく」
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(いちむら・ゆうじ)1984年3月阪大経済学部卒後、同年4月NEC入社。2008年3月グローバルサービス事業部長、20年4月コニカミノルタ常務執行役DX改革等担当、22年9月三菱ケミカルグループ執行役シニアバイスプレジデント兼CDOなどを経て、26年3月にフジテック社外取締役に就き、6月から現職。体を動かすことが好きで、休日にテニス、ゴルフ、スキー、マウンテンバイクなどを楽しむ。大阪府出身。60年10月26日生まれ、65歳。
◆記者の目
「社長は座にしがみついたらおしまい」と言い切り、「社長は自分より良い人を常に探し、後継者として育てなければならない」との信念を持つ。社長交代のプレスリリースに「26年度中をめどに長期的な発展を担う社長の選定プロセスを進める」と異例の文言を盛り込んだのはそうした考えからで、市村氏のこだわりがあった。実績の評価を受けた上で最適な人物がトップを務めるべきとの姿勢を示したという。会社を必ず成長させる社長としての強い覚悟を感じた。
