【11月まで実証実験/28年度には本格稼働見込む】
首都高技術がシャープと共同で開発を進めてきた「リアルタイム道路損傷自動検知システム」が実証実験段階に入った。道路を撮影した映像から落下物や舗装穴(ポットホール)など事故につながりやすい損傷をリアルタイムで検知して通知できる技術で、11月まで首都高速道路上で精度などを検証する。2027年度からは、フェーズ3のテスト運用段階に入り、28年度の本格稼働を見込む。巡回点検車の自動運転と自動点検までを見据えた次世代点検システムとして期待がかかる。
首都高速道路は、道路上に落下物やポットホールがあると、即事故につながるほど通行量が多く、通行速度も速い。事故が起きて渋滞が発生すれば経済的な損失も大きい。このため、首都高速道路会社は巡回車で1路線を2時間に一度という高い頻度で点検している。
巡回車には運転者と、損傷などを車上から撮影するカメラを携帯した点検員が搭乗し、事象を見つければ撮影して無線などで補修などを伝達していた。走行中の撮影のため、ベテランの点検員であっても、撮影画像のブレや不鮮明な画像、撮り逃し、撮り直しが発生してしまう。
現在は、巡回車で動画を撮影し、その位置と状況をリアルタイムで閲覧できる「インフラパトロールシステム」を稼働しており、事故につながる損傷を点検員が発見すれば緊急ボタンを押して、即時対応が可能だ。動画は、記録されており、場所と時間を指定して事後に確認することもできる。
開発中の技術は、これをさらに進化させ、リアルタイムの動画からポットホールや落下物を自動で検知して通知するものとなる。
ただ、動画の場合、どうしても画面の端にゆがみが発生する。それを「リアルタイムでゆがみがないよう処理し続けながら、落下物などを自動検知できる点が強みだ」とシャープの原田康弘研究開発本部オープンイノベーションセンター所長は語る。
この画像処理技術と、「首都高技術が保有している多様な損傷などのデータを学習したAI(人工知能)を組み合わせた」(首都高技術の窪田裕一インフラデジタル部課長代理)という。2月段階では、落下物が92%、ポットホールが80%、路面のひび割れが81%、植栽の路面へのはみ出しが90%、植栽による標識隠れが90%という検知精度にまで高まってきた。
10月からは、実際の首都高上で、雨天などの多様な気象・交通環境下での検知精度や損傷発生位置の把握、検知した損傷の道路管理者へのリアルタイム通知などを実証実験している。
将来的には「自動運転車両との連携や全国の自治体、道路管理者への技術提供も視野に入れている」(安中智首都高技術執行役員技術開発・DX推進室長インフラデジタル部長)と描いた道筋を明かす。
日本の生産年齢人口は減り続け、構造物の点検要員は不足しているにもかかわらず、構造物は老朽化し続けている。首都高も43年には開通から50年以上経過した構造物が67%を占めることになる。こうした中で、急速に進化・普及するAI技術が大きな希望となり得る。「維持管理の世界も、テクノロジーで大きく変わることになるだろう」(安中氏)。
