インタビュー・関東地方整備局 藤巻浩之局長 | 建設通信新聞Digital

5月19日 日曜日

その他

インタビュー・関東地方整備局 藤巻浩之局長

【上限規制へ受注者の声聞く/能登地震教訓に房総半島対応策】
 関東地方整備局の藤巻浩之局長は、日刊建設通信新聞社などのインタビューに応じ、「能登半島地震を教訓に、首都直下地震などが発生した際に房総半島でどのように対応するのか、関係者と考えていきたい」と今後の災害対応策を語る。「全てのスタートは現場だ。現場の実情を受注者からしっかり聞いていきたい」とし、4月から開始した時間外労働規制への対応にも万全を期す構えだ。『展開の年』と位置付けるDX(デジタルトランスフォーメーション)の裾野拡大にも注力する。2024年度の事業執行方針を聞いた。 「国土強靱化が語られ出して久しいが、強靱化予算で措置したところは確実に効果が出ている」と国土強靱化施策の意義を強調する。19年東日本台風を教訓に久慈川や入間川、多摩川などで進める緊急治水対策プロジェクトは、「工事が最盛期に入っている。しっかりと進め、同規模の雨が降った場合に被害が出ないようにしていきたい」と力を込める。30年度の完成を目指す荒川第二・第三調節池は、「下流側の第二調節池の整備を優先し、26年の出水期までに暫定的な効果を出すようにしたい」と見据える。
 「道路の老朽化対策はまったなしだ」と道路メンテナンスにも注力する姿勢を示す。完成後50年を経過する管内の橋梁は22年度末の36%から、10年後には55%、20年後には74%と大きく増加する。「できるだけ早く手を打ち長寿命化していく必要がある。19年度にできた関東道路メンテナンスセンターでは、メンテナンス業界のかかりつけ医として昨年度までに自治体から102件の相談を受け実績を積んでいる」とし、着実な道路の維持管理を進める方針だ。
 首都直下地震発生時には、迅速な復旧・復興に向けて、都心につながる道路を啓開する八方向作戦を担う。「実効性を高めるため、昨年8月には実動訓練を実施した。災害時には、これまで経験したことしかできない。訓練を通じて課題を見つけ、スパイラルアップをしていければ」と気を引き締める。
 元日に発生した能登半島地震の被災地には、TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)を延べ2760人派遣した。「東日本大震災の延べ2916人に匹敵する規模の派遣だった。従来どおりの被災状況調査や建物の応急危険度判定はもちろん、避難所の照明のために照明車を使うなど、被災者支援にも活躍した」と成果を語る。
 建設業界に対しては、「地域の守り手である業界の皆さんがいち早く出て、頑張っていただいたおかげでなんとか今の状態まで復旧できた」と感謝の言葉を寄せる。その上で、「管内1都8県の建設分野の各団体との連携や訓練、意見交換をこれからも密にしたい」と力を込める。
 今年2月の大雪の際には、国道を通行止めし立ち往生を防いだ。「前例のない取り組みだったが、大規模なスタックや渋滞はなく、除雪もスムーズにいった」と効果を強調する。一方で、「事前の広報が十分ではなかった。今年の冬の初めまでに、事前広報の方法やタイミングを検討したい」と見通す。
 時間外労働規制に対応するため、受注者に対しては「実際に現場で何が起きているのか、困っていることはないのかを工事発注を担当する事務所に伝えてほしい」と呼び掛ける。発注機関としては、独自に本官・分任官も含めた全ての工事を対象に、発注者指定で月単位の週休2日制工事に取り組む。
 土木工事電子書類スリム化ガイドのバージョンアップ、都県との書類統一化などのさまざまな施策も打ち出し、「都県との書類統一化は埼玉県から始めたが、1都7県にも広げたい。その後は道路会社、水資源機構、電力会社、大きな市にも拡大したい」と意欲を見せる。