新社長インタビュー・織本構造設計 小林光男氏 | 建設通信新聞Digital

5月19日 日曜日

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新社長インタビュー・織本構造設計 小林光男氏

【WLBの実現に注力】
 織本構造設計の社長に4月1日付で、小林光男氏が就いた。小林新社長は、「働き方改革を推進し、ワーク・ライフ・バランス(WLB)を重視した会社経営に力を入れたい」と意気込みを語り、社員やその家族のためにも、仕事と生活を楽しく両立できる環境を整えたいという思いをにじませる。2年後の2026年に創立70周年を控える中で、どのような経営手腕を振るい、織本構造設計の“あるべき姿”を目指すのか、小林新社長に聞いた。--就任の抱負を
 「これまでは非常に豊富な業務量を社員にこなしてもらっていたため、大きな負担をかけていたこともあった。これからは社員自身の生き方を大切にしてもらえるよう、WLBを実現する環境整備に重点を置きたい。 WLBの実現を通じて、技術継承の観点からも、みんなが居続けたいと思う会社を目指す。その 一方で、従来のように働きたい人もいるため、そうした意向も尊重していく。 新人の教育や中途採用の拡大にも力を入れたい」
--WLBのためにどのような環境整備を
 「週1回の在宅勤務に加え、4月からは社員が望む生活リズムに応えられるよう、拡張型時差通勤の本格運用を始めた。技術の継承には人との触れ合いが重要と考え、完全フレックス制とはせずにコアタイムを設けている。次の一手で、DX(デジタルトランスフォーメーション)化を進めたい。現在、内製化している図面作成や構造計算について、信頼できるパートナーの力を借りる頻度を増やし、働き方改革を推進することも考えている」
--業務で大切にしていることは
 「建築構造設計の専業事務所として、誰もが安心して生活・活動できる安全な建物を提供することが重要だ。だからこそピアチェック(構造計算適合性判定)には、きちんと対応していく。最近は施工面、設計面からも整合性の確認という行為で、ピアチェック以外の方法が出てきている。BIMでの総合的な設計の要求が高まっており、それにも応えていく」
--教育面の取り組みは
 「昨年入社の新入社員から、細分化したプログラムを組んで教育している。1年目は共通教育とし、2、3年目になるに従い、構造計算やCADなどの部署に分かれてさらにステップアップしていけるようにしている。最近では計算スタッフがBIMに触れた方が勉強になると考え、中堅クラスに外部で講習を受けてもらうなど、技術力の向上につなげている」
--カーボンニュートラル(CN)への貢献について
 「SDGs(持続可能な開発目標)のうち、11番目の目標『住み続けられるまちづくりを』に貢献できると考えている。自然災害が発生すると住宅や什器(じゅうき)などが壊れ、廃棄物になってしまう。当社が得意とする制振構造・免震構造などを採用した、壊れにくく住み続けられる安全・安心な建物を提供することでCNに貢献したい」

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 (こばやし・みつお)1986年3月東京理科大工学部第一部建築学科卒後、同年4月織本匠構造設計研究所(現織本構造設計)入社。2008年業務執行役員、16年取締役などを経て、20年専務、24年4月から現職。心に刻む言葉は、入社当時の社長が語った『技術を売っても魂は売るな』と、高校の担任からその後の経験にもなるからと教わった『無駄と知りつつ、無駄をやれ』。東京都出身。62年5月27日生まれ、61歳。

■記者の目
 開口一番、切り出した内容がWLBを重視する姿勢だ。さまざまな話の中でも、終始、このキーワードをちりばめ、社員ファーストの姿勢を鮮明にする。「みんなが居続けたいと思う会社」を思い描いているのは、70周年より先を見据えているからこその布石ともいえよう。そのために、“ワーク”と“ライフ”のバランスが取れた環境をどう整え、従業員エンゲージメントも高めていけるのか。その手腕に注目していきたい。