
鹿島の新社長に26日、桐生雅文氏が就任した。大半を建築現場で過ごしたというキャリアを背景に、経営の最重要課題に「人」を掲げる。人と人とのつながりから生まれる信頼を重んじ、人間味のある関係づくりを自身の持ち味と語る。前社長らが進めてきた効率的な仕組みを引き継ぎ、さらなる高みへと引き上げつつ、AI(人工知能)などの先進技術を生かせる「人」を大切にしたいと考える桐生氏に今後の経営方針について聞いた。
ーー就任の抱負は
「創業186年の歴史と、グループで2万人を超える従業員を擁する鹿島のかじ取りを担い、身の引き締まる思いだ。私の強みは、長年従事した建築現場で養った判断力と調整力にある。今の自分があるのは、発注者や協力会社、地域の関係者、そして社内の先輩・後輩の支えがあってこそだ。人と人とのつながりから生まれる信頼を確かなものとし、グループのさらなる発展に尽力したい」
ーー経営の方針は
「今年度は現中期経営計画の最終年度だ。前社長が進めた施策を継承し、一段高い水準へと引き上げる。生産性向上や人材育成、技術継承などの成果が出ている取り組みを、さらに進化させたい。AIの活用はもはや欠かせないが、AIはあくまで道具であり、示された選択肢から最後に価値を判断し、決断を下すのは人だ。現場で確かな判断を下すには、生きた経験が不可欠となる。失敗を恐れず、現場で自ら考えてもらうことも大切にする」
ーー事業領域やM&A(企業の合併・買収)の考えは
「生業の中心は請負業だが、安定的な経営基盤の強化に向けて、企画から設計、施工、建物管理まで、開発を含めた建設バリューチェーンを一段と推し進める。国内は国土強靱化に加え、データセンター、半導体や薬関係の生産施設などに需要を見込む。中計ではM&Aを想定した戦略投資枠を設けており、成長性のある分野への領域拡大や施工力強化などに継続して取り組む。業界再編のような規模の大きな同業他社へのM&Aは建設業界にはなじまず、考えていない」
ーー協力会社との関係強化や担い手確保について
「当社に付いてきてほしいのは当然だが、もっと考えるべきは業界全体の担い手不足だ。支払い条件の改善で経営を後押しするほか、次世代の経営者向けに経営の勉強に協力する取り組みもある。処遇の改善や建設業の魅力の発信も欠かせない。長い時間をかけて建物をつくり上げ、苦楽を共にした関係者と達成感を分かち合う。これほど素晴らしい仕事はない。その価値をもっとアピールすることで、共感する人にぜひ入ってきてほしい」
ーー自らの色をどのように出すのか
「強みは現場経験だ。建設業は、最後は感情を持つ人が現場を動かす。上から目線でも、下から持ち上げるのでもなく、現場で働くみんなが互いに認め合い、腹を割って話せる風通しの良い関係をつくりたい。これは現場も組織も、顧客との間でも変わらない。忘れてはならない人間味のある関係を、私の色として打ち出す」
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(きりゅう・まさふみ)1984年3月早大理工学部建築学科卒後、同年4月鹿島入社。2018年2月東京建築支店建築部長、21年4月執行役員副支店長、24年4月常務執行役員横浜支店長を経て現職。東京都出身。61年11月21日生まれ、64歳。
