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私と東日本大震災の15年

寄稿・徳山日出男(国土技術研究センター理事長、元国土交通事務次官)

最終更新 | 2026/03/03 16:10

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伝承の神髄は「自分事化」 今が風化か定着の分岐点

東北地方整備局の災害対策室で指示を出す筆者 



 国土交通省東北地方整備局長を任されていたあの日から、15年の月日が経過します。以来、ライフワークとして東北に関わり続けてきたわけですが、この寄稿を単なる思い出話にはしたくありません。15年という節目には、とても大きな意味があると考えています。今の東北の立ち位置や今後の進むべき姿を示唆できれば幸いです。
 これまでを振り返ると、一部重なりながら、三つの期に分けられると思います。第1期はもちろん、初動対応を含めた復旧・復興であり、発災から10年ほどがこれに該当します。堤防や道路などは元に戻すだけでも大変なのに、東北はビルド・バック・ベターの考え方によって、以前よりも災害に耐え得る強靱な国土に変わりました。本当に10年でよくやったと思いますし、さまざまな方々の熱意に感謝しかありません。
 第2期は、復旧・復興と並行して途中から流れが起き始めた経験の伝承です。現在取り組みの中核となっている3・11伝承ロード推進機構は、2019年に発足しましたが、そこに向けた議論を始めたのは震災から6年目頃、七回忌に当たるタイミングでした。
 例えば、それまでは宮城県南三陸町の防災庁舎を早く取り壊してほしいという地元の声が大きかったのですが、不思議なことに、七回忌が終わる頃には、みんな気持ちに落ち着きを取り戻し、伝承施設を残すための議論が、表立ってできるようになったことを覚えています。地元を復興するだけでなく、恩返しをしていきたい。たくさんの痛ましい傷とともに得た教訓を、次の備えとして他に広く伝えなければという使命感にも、エネルギーを割けるようになってきました。
 個々の伝承施設は世の中にたくさんありますが、県をまたいでネットワーク化された大規模な伝承ロードは、日本で唯一のものと言えます。心の中にある後悔の念を伝えて、同じような後悔をする人を一人でも少なくしたい。そんな思いが集まってたくさんの伝承施設が立ち上がり、語り部たちが活動してくれました。これが第2期で、第1期とともに「感謝」で終わることができました。

震災直後の3月27日にヘリコプターで南三陸町入りし、佐藤仁町長(当時)に防災庁舎を伝承施設として残すべきと伝えた

東北地方整備局の災害対策室で指示を出す筆者 [/caption]
 そして今、われわれは第3期にいます。実は23年ごろから、多くの伝承施設で来場者数が減り始めています。この事象に限ったことではないですが、やはり恐れていた「風化」が起きています。当時を目の当たりにした首長たちの交代も大きい。偶然か、23年は震災から12年目、つまりは十三回忌に当たります。七回忌、十三回忌には理屈を超えた意味があるようで、人々の意識の節目になっているみたいです。
 能登半島地震の2カ月後、東北で語り部たちと話をしていたときのこと、「われわれの10年は何だったのだろう」という声が漏れてきました。群発地震が発生していた能登でさえ、「まさか」が多く聞かれたからです。一生懸命に語り掛けてきたけれど、伝わっていなかった。要するに、情報はたくさんあるのに「自分事化」ができていないわけです。
 伝承施設に人を集めるためのテクニックはいろいろあるでしょうが、人生観を変えるほどの体験を提供し、他人事を自分事に置き換えることこそが、根幹でありキラーコンテンツです。残念ながら5年後の20年目には、もっと風化が進んでいるでしょう。伝承のみならず、復興そのものについて、東北が忘れられていくかどうかの瀬戸際が、今の15年目だと思います。特別な支援がなくても、続いていけるようにしなければならないし、第3期を乗り越えられれば、それこそ100年先も見据えられるでしょう。

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