【本】「人の身体との接点」の追求した心地よい1冊  堀部安嗣著『小さな五角形の家 全図面と設計の現場』 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【本】「人の身体との接点」の追求した心地よい1冊  堀部安嗣著『小さな五角形の家 全図面と設計の現場』

 なんとも心地がよい。この本を最初に見た時の率直な印象だ。名古屋市郊外の住宅地に建つ30坪の住宅。本書は著者が設計した、この「五角形の小さな家」だけで構成している。
 「平面図の完成度」と「過不足のない構造美」を追求し、「設備に寛容な“懐の深さ”」と「プランを引き立たせる細部」に留意し、建具や家具など「人の身体との接点」のデザインを、粘り強く改良を重ねていく。
 収録された写真や手描きのスケッチ、各種実施図と施工図、さらに建築家の柳沢究氏による図面解説が設計意図をより明快に伝え、入居後1年時点での建て主夫妻との鼎談や造園家、構造家や施工者のコラムからはさまざまな関係性を重視しながら、綿密な論理構成と研ぎ澄まされた感性で絶妙にバランスさせていく建築家としての姿勢が浮かび上がってくる。
 周囲の町にやさしく接する、その柔らかでマッシブな佇(たたず)まい、その質感までもが手触りで伝わってくるような1冊だ。(学芸出版社・3800円+税)

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