首里城復元 正殿仕上げ塗り本格化/よみがえる往時の色調/清水JV | 建設通信新聞Digital

5月5日 月曜日

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首里城復元 正殿仕上げ塗り本格化/よみがえる往時の色調/清水JV

久志間切弁柄を顔料とする仕上げ塗り
 清水建設・國場組・大米建設JVが復元整備工事を進めている首里城正殿では現在、久志間切弁柄(くしまぎりべんがら)を顔料とする塗料を正殿外部に上塗り(仕上げ塗り)する工事が本格化している。外部塗装工事は2024年2月に着手。これまで下地付け、中塗りを進めてきており、上塗りにより特徴ある正殿のきらびやかな色合いがよみがえる。 現在、約30人の塗装工が入場し、その3割を占める20代の若手が伝統技術の習得に努めている。
 正殿の塗装は、下地付け、中塗り、上塗りを重ねて仕上げる。塗り重ねの工程数は、正殿の部位により15、19、21、27の四つのパターンに分かれ、久志間切弁柄を顔料として使用する部位では、いずれも最終工程で久志間切弁柄と市販弁柄を桐油(とうゆ)で溶いた塗料を上塗りし、色調を整える。この上塗りを行う部位は、外部塗装面積の9割以上を占める。
 弁柄は酸化鉄系の赤い顔料で、着色力、耐熱性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性のいずれにも優れている。一方の桐油は、油桐の種子から採取される油分で、湿気や雨水を防ぐ効果に優れ、古来より木材の塗料に用いられてきた。弁柄を桐油で溶いた塗料の上塗りが高温多湿で日射が強い沖縄の気候から正殿を守る。
 久志間切弁柄は、かつて久志間切(現在の名護市久志地区)から調達された弁柄で、水中の鉄バクテリア由来の茶褐色の水から製造される。令和の復元整備での使用量は約43㎏。全量、発注者である内閣府沖縄総合事務局が調達し、清水建設JVに支給された。
 平成の復元時には、往時の正殿に使われていた顔料の由来を特定できなかったが、その後の専門家による研究により、沖縄本島北部の水辺に存在する鉄バクテリアに由来する可能性が高いことが判明。この天然の顔料による往時の色調の復元を目指して、顔料の生産方法や塗装工程の検討、塗装の耐候性試験などが行われた。
 今後の主な工程は、秋ごろに塗装工事が終盤に近づくと素屋根の解体が始まり、弁柄色に染まった正殿が徐々に姿を現す。解体後には正殿の妻側につながる西之廊下と南之廊下の建設に着手し、26年9月末の完成を目指す。