そこが聞きたい・三機工業執行役員建築設備事業本部エンジニアリング推進本部長 岩岡亨氏 | 建設通信新聞Digital

5月8日 木曜日

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そこが聞きたい・三機工業執行役員建築設備事業本部エンジニアリング推進本部長 岩岡亨氏

【新たな100年の基幹組織で何を実現?/変更ない施工管理へ変革】
 三機工業は、売上高の8割を占める建築設備事業本部の傘下に、昨年設置した設計本部に続いて「エンジニアリング推進本部」を4月1日付で設けた。その本部長に就いた岩岡亨執行役員は「当社は4月に創立100周年を迎えた。これからの100年を念頭に、『高度な知識と卓越したスキルで、顧客が求める快適な施設環境と地球が求める快適環境を創造し、新たな100年の基幹組織となる』ことを当推進本部のビジョンに掲げた」と明かす。基幹組織となるべく何を実現していくのか、岩岡本部長に聞いた。 昨年の設計本部設置の背景に、大型化する案件への対応があったように、岩岡本部長もエンジニアリング推進本部の設置に同じ理由を挙げる。「ここ2、3年、数百億円規模に上る大型案件の準備などに苦慮したこともあった。そこでわれわれが中心となって、全国の人員や組織を動かし、大型案件に最初からしっかりと乗り込んでいけるようにしたい。大型の産業系空調案件をターゲットに支援する」と意気込みを語る。
 設計本部との違いにも言及し、「大型案件の設計を拠点ごとではなく、設計本部が全社統括して対応し、設計対応力の強化につなげている。一方、当本部は、設計から業務を引き継いで施工図を中心にこちらで対応し、それを現場に流して施工管理を支援していく」と役割を強調する。
 具体的には、「設計本部と協業したり、施工体制も整えたりして大型案件を円滑に着工・施工できるようにする。施工計画、施工要領書の作成などの重要な仕事は、施工の前段階に集中しており、そこにわれわれがフロントローディングで入ってやり切る」考えだ。
 さらに、「これで手戻りをなくし施工品質の確保や原価低減、現場業務の生産性向上、働き方改革などにもつなげたい。フロントローディングで、お客さまも含めて仕様など全てを決めて、現場では変更・修正がない状況で施工を進めるのが理想だ。100年以上も続いた変更の多い施工管理の仕組みがガラッと変わるように変革をもたらしたい」と抱く大志を口にする。
 とはいえ、それを実現するにも本部の活動は緒に就いたばかり。施工管理に限った支援は確定しているものの、どこまで業務に関与するかまでは未定だ。「関与については2パターンを考えている。一つは当本部がフロントローディングに関わり、ある段階で業務を引き渡してその後を任せるもの。もう一つは、フロントローディングで関わった人材がそのまま現場に常駐し、拠点と連携しながら施工を進めるタイプ」という。
 この選択をどうするのか。「2026年度にはパイロット案件を通じて、この2パターンを試行したい。27年度に現地施工が始まる大型案件を視野に入れているからだ。そこで対応を本格化させるため、26年度にフロントローディングに関われるよう今年度中に足固めを行う」方針だ。
 岩岡本部長の視野は直近だけでない。「施工前半を切り取って、同業他社に三機工業のフロントローディングを販売し、着工後にお譲りする仕掛けもゼロではない」とさらなる先を見つめる。「当社がさらに成長していくための新たな収益源にも成り得る」とも。設計との両本部体制で同社の大型案件対応力をさらに高めて顧客に応える姿だけでなく、将来の夢も思い描く。
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 (いわおか・とおる)1989年4月三機工業入社。2019年4月常任理事中部支社統括部長、22年10月常任理事中部支社副支長、24年4月執行役員中部支社副支社長を経て、25年4月から現職。愛知県出身。67年3月8日生まれ、58歳。