「価格交渉」確実に進展/3月の価格交渉促進月間フォローアップ調査/中企庁 | 建設通信新聞Digital

8月26日 火曜日

行政

「価格交渉」確実に進展/3月の価格交渉促進月間フォローアップ調査/中企庁

建設業の直近6ヵ月間における価格交渉の状況
建設業の直近6ヵ月間における価格転嫁の状況 (コスト全般)
【建設業は30業種中4位に上昇/転嫁率上昇も改善の余地】
 資機材などのコスト上昇分を価格に反映する上で必要な「価格交渉」を、建設業でも行うことができる状況へと確実に変わってきたことが、経済産業省中小企業庁がまとめた2025年3月の「価格交渉促進月間」フォローアップ調査の結果で明らかとなった。価格交渉の申し入れや実施などを点数化した「価格交渉の実施状況」の業種別ランキングで、建設業は30業種中4位となり、前回(24年9月)調査からランクアップした。交渉の結果である「価格転嫁率」も前回調査から上昇している。 「価格交渉促進月間」は、多くの中小企業が価格交渉や、価格転嫁できる環境を整えるために21年9月から国が始めた。毎年9月、3月を同月間としており、中企庁はこれに合わせて、受注企業が発注企業にどの程度、価格交渉・価格転嫁できたかを調べるアンケートと、下請Gメンによる聞き取りを行っている。
 今回の25年3月(第8回)調査は、30万社に調査票を送付。前回より約1万4000社多い6万5725社から回答を得た。回収率は21.9%。
 「価格交渉」全体の傾向を見ると、「発注側企業から申し入れがあり、価格交渉が行われた」割合が前回から3.2ポイント増の31.5%に上昇。これに「受注企業から発注企業に交渉を申し出て、価格交渉が行われた」ケースを加えた、「価格交渉できた」全体割合も、前回から2.8ポイント増の89.2%に上昇した。「価格交渉が行われなかった」割合は2.8ポイント減の10.8%となり、価格交渉できる雰囲気が一段と醸成されつつあることが分かる。
 一方、価格交渉との両輪で重要となる「価格転嫁」の状況は、コスト増に対する価格転嫁率が52.4%となり、前回調査より2.7ポイント増えた。「一部でも転嫁できた」割合も、前回から3.2ポイント増え83.1%に上昇した。「転嫁できなかった」「マイナスとなった」割合は3.2ポイント減の16.9%に改善した。この結果を受けて中企庁は、価格転嫁の状況が改善しているものの、引き続き転嫁できない企業と二極分離の状態にあると分析し、転嫁が困難な企業への対策が重要としている。
 それでは全体状況と比べ、建設業の結果はどうだったのか。価格交渉や交渉申し入れの有無、交渉が実現しなかった理由によって加点・減点する方法で点数化した「価格交渉の実施状況」で、建設業は7.65(前回調査から0.50ポイント上昇)となり、業種別ランキングで、30業種中4位となった。前回調査の7位からポジションを三つ上げ、全体平均の7.18を0.47ポイント上回っている。
 直近6カ月間における建設業の価格交渉の状況を見ると、「発注企業から交渉の申し入れがあり、価格交渉が行われた」のは33.8%(前回調査から6.9ポイント増)、「受注企業から発注企業に交渉を申し出て、価格交渉が行われた」が36.2%(4.5ポイント増)。この二つを合算した価格交渉が行われたケースは70.0%(11.4ポイント増)に達した。逆に、「コストが上昇し発注企業から申し入れがなく、受注企業から交渉を申し出たが、応じてもらえなかった」は2.0%(0.1ポイント減)で、前回との変化は見られない。
 一方、交渉の結果である「価格転嫁率」で、建設業は30業種の平均を0.2ポイント上回る52.6%となり、前回調査から2.3ポイント上昇した。ただ、ランキングでは30業種中、前回と同じ12位にとどまり、転嫁面ではまだ改善の余地があることが浮き彫りとなった。価格転嫁率を要素別に見ると、原材料費53.7%(前回比2.1ポイント増)、エネルギー費48.2%(2.2ポイント増)、労務費50.4%(3.0ポイント増)といずれも改善している。
 直近6カ月間における建設業の価格転嫁の状況を見ると、10割の転嫁が19.4%(前回調査から1.4ポイント増)、9-7割が19.7%(4.8ポイント増)、6-4割は9.2%(1.7ポイント増)、3-1割は22.6%(2.1ポイント増)。これらを合算した価格交渉できた割合は70.9%(10.0ポイント増)となった。
 こうした状況に対し、建設業での価格交渉と価格転嫁の関係性を見ると、「価格交渉は行われたが、全く価格転嫁ができなかった」のは、前回調査から1.8ポイント改善し、7.2%になったことも今回の調査で判明した。ただ、全体の7.4%(1.4ポイント改善)より割合は低くかったものの、30業種中16位だった。依然、交渉しても価格転嫁できない問題も潜在化しているといえる。
 今回のアンケート回答者からは、「原材料費やエネルギーコスト、人件費などが高騰している状況を踏まえ、値上げ交渉に応じてもらい、価格に反映された」「労務費、原材料費、エネルギーコストなどの上昇分の全てを100%価格転嫁できた」などの声が聞かれる一方で、「価格交渉の際、『他の同業者より安くしないと発注できない』と言われた」「仕事をもらっている立場上、意見が言えないことを分かっていて、大幅な値引きを迫られる」「コスト上昇のため値上げを申し入れたが、『取引が無くなるかもしれない』と言われ、価格を据え置くことを一方的に決定された」などの声も寄せられた。