AI使いこなす設計者に/可能性拡張で格差解消/日大建築工学科で講義 | 建設通信新聞Digital

7月7日 月曜日

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AI使いこなす設計者に/可能性拡張で格差解消/日大建築工学科で講義

AIでつくった建築を発表する学生
横関氏
 設計のツールとしてAI(人工知能)を当たり前に利用する--。そんな時代が目前まで迫っている。それを見据え、千葉県船橋市の日本大学生産工学部建築工学科で3日、AIをテーマとした講義が行われた。BIMの設計支援を手掛けるフローワークス(名古屋市)の横関浩代表取締役最高経営責任者(CEO)が、AIの進化の過程や今後起こり得るAI社会の在り方を紹介した上で、生成AIを使った設計プロセスを解説。4年生を中心とする22人が実際にAIを使いながら、建築のコンセプト立案とパース・動画作成に挑戦した。 「この社会でAIは、もはや切っても切れない存在だ」。横関氏がそう言うのは、AIが人間のように自ら学び、さらには自律的に行動して任務を遂行するほど、人間の代わりになりつつあるためだ。「3カ月ペースで1世代バージョンアップしている」ほどの加速度的なスピードで、今後ますます進化を続けようとしている今、「使いこなすことは非常に重要になっていく」という。
 米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の創業者・ジェンスン・フアン氏が『AIが仕事を奪うのではない。AIを使う人が仕事を奪うのだ』と言うように、「使いこなせるようにならなければ、取り残される」と横関氏は指摘する。今後、「設計の全ての過程でAIが使われるようになる」とみるからこそ、使いこなせる人とそうでない人の間で格差が生まれるとし、AIを身に付ける必要性を訴える。
 さらに、発注者側がAIを有効活用するようになると、AIを使いこなせない設計者はプロポーザル審査で、「発注者の求める水準の答えを出すことができなくなる。当然、AIを使いこなす設計者に負けてしまう」と予想する。
 今回の講義では、対話型AI検索エンジン「Perplexity(パープレキシティ)」で、設計したい建築のリサーチ・分析を進めた。
 この際に重要なのは「ほしい情報を細かく列挙」してプロンプト(指示、質問)を設定することで、これにより、より精度の高い成果を得ることができる。課題を列挙させることや、AI自身に批判させること、自分の立ち位置を認識させることも重要だ。
 パースの作成は、生成AI「Copilot(コパイロット)」の画像生成機能など、各自使いやすいものを使用。建築系のパース作成では、「Midjourney(ミッドジャーニー)」が優れているという。
 横関氏は学生に、「これからAIを使わざるを得ない状況が必ず出てくる。AIを使って自分の可能性を拡張していけば、1年目でも10年目の人と対等に渡り合える。ぜひ活用してほしい」と呼び掛けた。
 日本大学生産工学部建築工学科の永井香織教授は「生産工学部はマネジメントできるエンジニアを創出するという趣旨で設立された。マネジメントする視点に立つと、実務に即した技術を身に付けることが欠かせない」とし、一線で活躍する人から直接学ぶ機会や、実習に力を入れている。今回のAI講義もその一環だ。