【事前防災徹底し想定外なくす/関係省庁の連携強化にも注力】
内閣府の新設ポストである防災監に1日付で就任した長橋和久氏が7日、日刊建設通信新聞社のインタビューに応じた。頻発化・激甚化する風水害や切迫する南海トラフ地震などの大規模災害に対し、事前防災を徹底して想定外をなくすとともに、より高度な防災施策を展開するため、各府省庁の連携強化に向けた調整役を担う。「最悪な事態が発生しても極力被害を最小にし、国家としての機能や経済活動を維持しなければならない。重責を感じるが、これまでの経験や知見を全て出し切り取り組む」と意気込む。
防災監は、事前防災と発災直後の応急対策から復旧復興に至るまでの災害対応全般を担う司令塔として設置された次官級ポストだ。「インフラ施設の耐震化であれば国土交通省というように、具体的な防災政策は各府省庁が担っているが、より政策の実効性を高めるため、俯瞰(ふかん)的な観点から連携強化に向けた調整を図る」と説明する。
国交省が進める国土強靱化も事前防災に深く関わるが、「計画をつくって後はお任せではない。いざ災害が発生したときに実際にそこの地域の命が守れるかという観点で進捗(しんちょく)を確認しながら進めていく」と強調する。
基本的な防災政策の企画立案や各府省庁の調整を担当する内閣府防災は防災監の新設とともに、2025年度に人員を110人から220人に増員し、関連予算も昨年度の約73億円から倍増するなど体制を強化した。「今までは災害が発生すると、平時に取り組んでいる事前防災関連の業務を中断せざるを得なかった。中長期的な計画を含め、被害の未然防止、軽減に向けた施策をしっかり行う体制を確保した」と語る。
26年度中を予定している防災庁の設置に関しては、兼務している内閣官房防災庁設置準備室長代理という立場で関わる。「南海トラフ地震では最大1200万人の避難が必要になると想定されている。行政が持っているリソースだけではとても対応できない。産学官民とも連携した事前防災の体制を準備するために、司令塔としての防災庁の役割が期待されている。政府全体の防災政策を加速するための権限を持った組織として今後、検討を進めていく」と方針を示す。
政府は更新した被害想定を踏まえ、1日に南海トラフ地震防災対策推進基本計画を改定した。今後10年の減災目標として、死者数は想定の約29万8000人から約8割、建築物の全壊焼失棟数は約235万棟から約5割の減少を掲げ、政策の具体的な目標は48個から205個に大幅に増やした。「目標は全国的な数値ではなく、南海トラフ地震防災対策推進地域に絞った指標とした。毎年度フォローアップしながら目標を達成できるよう取り組む」と力を込める。
前職の内閣官房復旧・復興支援総括官を務めた際には、能登半島地震の被災地復興に力を注いだ。半島という地理的な特徴や日没直前の発生などの条件が重なり、初動の段階で被害の全体像が分からなかったこと、全国と比べて住宅の耐震化が進んでおらず建物の被害が多かったことなどの課題を振り返り、「災害はいろいろな要素が重なって起きる。事前のシミュレーションを徹底し、常に最悪な事態に対応できるようにしなければならない」と気を引き締める。
発災時に災害対応に当たる建設業に対しては「復旧復興の担い手として欠かせない産業だと痛感している」とする一方、担い手確保の課題に直面していることに懸念を示す。「計画をつくっても実施する人がいなければ意味がない。防災の観点からも、建設従事者の処遇改善など建設業の持続的な発展に向けた取り組みを進める必要がある」と強調する。
内閣府の新設ポストである防災監に1日付で就任した長橋和久氏が7日、日刊建設通信新聞社のインタビューに応じた。頻発化・激甚化する風水害や切迫する南海トラフ地震などの大規模災害に対し、事前防災を徹底して想定外をなくすとともに、より高度な防災施策を展開するため、各府省庁の連携強化に向けた調整役を担う。「最悪な事態が発生しても極力被害を最小にし、国家としての機能や経済活動を維持しなければならない。重責を感じるが、これまでの経験や知見を全て出し切り取り組む」と意気込む。
防災監は、事前防災と発災直後の応急対策から復旧復興に至るまでの災害対応全般を担う司令塔として設置された次官級ポストだ。「インフラ施設の耐震化であれば国土交通省というように、具体的な防災政策は各府省庁が担っているが、より政策の実効性を高めるため、俯瞰(ふかん)的な観点から連携強化に向けた調整を図る」と説明する。
国交省が進める国土強靱化も事前防災に深く関わるが、「計画をつくって後はお任せではない。いざ災害が発生したときに実際にそこの地域の命が守れるかという観点で進捗(しんちょく)を確認しながら進めていく」と強調する。
基本的な防災政策の企画立案や各府省庁の調整を担当する内閣府防災は防災監の新設とともに、2025年度に人員を110人から220人に増員し、関連予算も昨年度の約73億円から倍増するなど体制を強化した。「今までは災害が発生すると、平時に取り組んでいる事前防災関連の業務を中断せざるを得なかった。中長期的な計画を含め、被害の未然防止、軽減に向けた施策をしっかり行う体制を確保した」と語る。
26年度中を予定している防災庁の設置に関しては、兼務している内閣官房防災庁設置準備室長代理という立場で関わる。「南海トラフ地震では最大1200万人の避難が必要になると想定されている。行政が持っているリソースだけではとても対応できない。産学官民とも連携した事前防災の体制を準備するために、司令塔としての防災庁の役割が期待されている。政府全体の防災政策を加速するための権限を持った組織として今後、検討を進めていく」と方針を示す。
政府は更新した被害想定を踏まえ、1日に南海トラフ地震防災対策推進基本計画を改定した。今後10年の減災目標として、死者数は想定の約29万8000人から約8割、建築物の全壊焼失棟数は約235万棟から約5割の減少を掲げ、政策の具体的な目標は48個から205個に大幅に増やした。「目標は全国的な数値ではなく、南海トラフ地震防災対策推進地域に絞った指標とした。毎年度フォローアップしながら目標を達成できるよう取り組む」と力を込める。
前職の内閣官房復旧・復興支援総括官を務めた際には、能登半島地震の被災地復興に力を注いだ。半島という地理的な特徴や日没直前の発生などの条件が重なり、初動の段階で被害の全体像が分からなかったこと、全国と比べて住宅の耐震化が進んでおらず建物の被害が多かったことなどの課題を振り返り、「災害はいろいろな要素が重なって起きる。事前のシミュレーションを徹底し、常に最悪な事態に対応できるようにしなければならない」と気を引き締める。
発災時に災害対応に当たる建設業に対しては「復旧復興の担い手として欠かせない産業だと痛感している」とする一方、担い手確保の課題に直面していることに懸念を示す。「計画をつくっても実施する人がいなければ意味がない。防災の観点からも、建設従事者の処遇改善など建設業の持続的な発展に向けた取り組みを進める必要がある」と強調する。