新会長・日本コンストラクション・マネジメント協会 吉田敏明氏 | 建設通信新聞Digital

7月9日 水曜日

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新会長・日本コンストラクション・マネジメント協会 吉田敏明氏

【三方良しへCM理解浸透】
 6月20日の定時総会で日本コンストラクション・マネジメント(CM)協会の会長に就任した吉田敏明氏(三菱地所設計エグゼクティブフェロー)は、「発注者とCMR(コンストラクション・マネジャー)、設計・施工者の三方良しが実現できる関係づくり」の重要性を語り、協働を支えるCMへのさらなる理解浸透を目指す。地方と都市、設計とCMといった垣根を越え、連携と普及をどのように描くのか今後の展開を吉田新会長に聞いた。--就任の抱負は
 「設計事務所などでは以前、設計とCMの対立構造があったが、今では両立する事例が増えている。設計事務所出身の経験を生かして、特に地方の中小設計事務所などがCMという新たな領域に踏み出そうとする際の橋渡し役を担いたい」
--CM業界の現状は
 「会員企業向け調査で、2024年度の売上高の合計が400億円を超えて過去最高となり、CM方式の導入実績も伸びている。公共分野では病院・庁舎・学校が三大領域として定着し、市町村レベルでの導入余地はまだまだ大きい。民間でも導入企業は増え、普及段階から具体的な活用段階へと移行しつつある」
 「ただ、担い手不足は深刻で、特に地方での人材育成が喫緊の課題だ。将来的には、住宅分野や既存建物向け業務にも対応し、業界としての幅を広げていく必要がある」
--普及へ注力することは
 「全国の支部間にあるCMの理解度や協会活動に対する熱量の差をなくしながら、支部が感じている課題意識を本部の普及、教育両グループなどと迅速に共有するためのつながりを強化したい」
 「地方では、東京に拠点を置く大手CM企業が受注して地元企業にチャンスが回りにくいという声もある。CM業務のJVのような仕組みやマッチングのためのプラットフォームなどを構想し、ゆくゆくは、地方企業の参入を後押ししたい」
--実現への組織体制は
 「支部間のさまざまなギャップを埋めるため、24年度に設けた支部連携会議を通じて情報共有と支援の強化を継続する。今後は、支部担当の常務理事を中心に、地域の声を本部に届ける仕組みを強化し、より実効性のある取り組みの全国展開を目指す」
 「大学の建築系学科では、CMを教えられる教員がまだ少ない。学生に『こんな仕事があるのか』と関心を持ってもらえるよう大学への出張講義や資格制度の周知を通じて、次世代の担い手を呼び込む」
--人材をどう増やすか
 「資格者の裾野を広げることが鍵を握る。当会の認定コンストラクション・マネジャー(CCMJ)資格は、首都圏では順調に受験者が増えているが、地方の中小設計事務所などでは手続きや実務経験などの面でハードルが高く、受験しにくいという声もある。資格の意義を発信しつつ、試験制度や学習支援を充実させる必要がある」
 「実務経験のない学生向けの資格もあるが、まだまだ母数が少ない。将来的には、就職前に資格を取得し、本格的なCMへの足がかりにする流れを構築したい」
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 (よしだ・としあき)1992年3月東工大(現東京科学大)大学院理工学研究科建築学専攻修了後、同年4月三菱地所入社。99年12月米国テキサス大オースチン校工学部建設工学科プロジェクトマネジメント専攻修了。2001年6月三菱地所設計出向、22年4月からエグゼクティブフェロー。CM協会には設立時から所属し、20年6月常務理事などを経て現職。
◆記者の目
 組織設計事務所のCM部門幹部という立場での会長就任は歴代で初めて。設計の現場で経験を積みながら、手探りで黎明(れいめい)期にあった日本のCMに取り組んできた。「CMは単なる調整役ではなく、プロジェクト全体の関係性を整えて成功へ導く存在だ」と力を込め、自身の経験を踏まえ「設計の仕事をしながらCMに踏み出したい人たちの背中を押したい」と意欲を燃やす。