歴史まちづくりの裾野拡大/計画認定 国指定以外の文化財視野/国交省が検討開始 | 建設通信新聞Digital

8月24日 日曜日

行政

歴史まちづくりの裾野拡大/計画認定 国指定以外の文化財視野/国交省が検討開始

 国土交通省は、地域固有の歴史・伝統の資産を生かした「歴史まちづくり」の裾野を広げていくための新たな検討に入った。まずは、歴史まちづくり法に基づく歴史的風致維持向上計画、いわゆる「歴まち計画」の認定に必要な重点区域の“核”となる対象範囲の拡大を検討する。これで歴史まちづくりの裾野を広げ、計画認定数を増やして地域の活性化などにつなげたい考え。そのために、現在要件としている国指定の重要文化財や国宝などにとどまらず、対象範囲を地方自治体指定の文化財などにも広げられないか可能性を探る。 この方向性は、非公開で開かれた「第1回地域資源の保全と活用に向けた歴史まちづくりや景観行政に関するワーキンググループ(WG)」(座長・浅野聡国学院大観光まちづくり学部教授)で取り上げられた。今年5月に有識者会議「都市の個性の確立と質や価値の向上に関する懇談会」(座長・野澤千絵明治大政治経済学部教授)が示した中間まとめ「成熟社会の共感都市再生ビジョン」を踏まえての検討となる。
 現在、政府がインバウンド(訪日外国人客)の2030年目標で掲げる6000万人。これを達成し、地方にもインバウンド消費などの恩恵をもたらすためには、東京や京都、大坂などに例えられる、いわゆるゴールデンルートだけでなく、こうした都市以外の観光資源をうまく保存・活用して新たな魅力を創出し、地域を盛り上げていくことが必要だ。
 そこで国交省が都市の個性の確立と質・価値の向上という視点とともに、政府目標の達成に向けて着目した制度の一つが歴まち計画。国から歴まち計画の認定を受けると、歴史的な魅力を生かしたまちづくりによる観光価値の向上や地域の活性化、整備関係などの財政的支援を受けやすくなるメリットなどもあり、地方活性化の手段の一つとも成り得る。
 ただ、現状では認定のハードルが高く、対象区域に国の重要文化財などを保有していなければならない。
 このため制度発足から17年の歳月を経て、25年7月30日時点で100計画認定という節目に達した。近年、その認定数は伸び悩んでいるのが現状だ。
 一方で、全国に存在する歴史的な財産から見れば、地域にとって大切な文化財や景観、歴史的建造物なども多数存在し、認定数をさらに拡大できるポテンシャルを秘めている。
 今回のWGでは、現況を打開するため、核となる文化財類型を見直し、制度に柔軟性を持たせて認定に必要な重点区域の核を拡大する案を示した。
 重点区域とは、歴史的価値の高い建造物などを核としたその周辺を含む市街地で、重点的に歴史まちづくりを進めることになる地域を指す。
 今後はその核を国選定の重要文化的景観、国の登録有形文化財や登録有形民俗文化財、登録記念物も対象にできないか検討する。さらに範囲として、地方自治体指定の有形文化財、遺跡、伝統的建造物群保存地区などにも拡大できないか今後、議論を深める。
 今回の初会合では、重点区域の核拡大のほかに、歴まち計画と文化財保存活用地域計画の連携も提案。文化財保存活用地域計画と歴まち計画で重複する事項については、文化財保存活用地域計画の記載内容をそのまま歴まち計画に記載できるようにして、計画を策定する自治体の業務負担を軽減する案を俎上(そじょう)に載せた。