新社長・阪神高速道路会社 上松英司氏 | 建設通信新聞Digital

8月27日 水曜日

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新社長・阪神高速道路会社 上松英司氏

【公団時代の使命受け継ぐ】
 「公団時代からの変わらぬ使命を受け継ぎながら、新たな価値を生み出したい」と語るのは、6月26日付で阪神高速道路会社の社長に就任した上松英司氏だ。建設事業や保全事業で多くの事業を抱える中、建設業界の働き方改革、都市圏の安全・安心、快適なネットワークの確保という役割も求められる。事業実施方針や社内の運営、人材育成などについて聞いた。--就任の抱負は
 「公団時代からの使命は基幹交通インフラであるネットワークを整備し、安全・快適に利用してもらうことだ。一方で、担い手不足や環境保全、デジタル革命などの社会情勢の変化も重要だ。モビリティーの高度化や脱炭素化、DX(デジタルトランスフォーメーション)なども進めたい」
--建設事業の方針は
 「供用延長は240㎞を超えた。しかし、近畿は3大都市圏の中でもミッシングリンクが多く残されている。淀川左岸線2期と延伸部、大阪湾岸道路西伸部、名神湾岸連絡線が事業中だ。大阪湾岸道路西伸部では長大橋、淀川左岸線延伸部では大深度地下トンネルを計画しており、技術的難易度も高い。早期整備を求められているため、着実に進めなければならない」
--保全事業で注力する事業について
 「リニューアルプロジェクトの14号松原線喜連瓜破(きれうりわり)付近の橋梁架け替えは、2024年12月に完了した。通行止めや半断面施工、迂回(うかい)路などの案を比較検討したが、通行止め以外の案は事業期間が10年以上必要だったため、通行止め案を採用した。事業ができたのは6号大和川線が広域迂回路として使えるようになったからだ」
 「今後は3号神戸線湊川付近の更新を検討している。鋼橋が疲労損傷しているため、すでに中間橋脚を施工し、応力を低下させている。しかし、高架橋の下には国道2号が通っており、社会的影響が大きい。大阪湾岸道路西伸部も開通していないため、迂回路もない。架け替えや補強を含め対策を検討する」
--人材確保と育成をどう進めるか
 「企業価値の源泉は人材だ。毎年二十数人を継続的に採用している。人数が少ない40代のキャリア採用も進めたい。今年4月からは定年を60歳から65歳へ延長し、一部社員をシニア人材として確保し、技術継承に努める。建設事業・保全事業ともに現場へ若手を配置することにより、現場を学び、気づきを得られるようにしている」
--働き方改革と生産性向上について
 「契約や検査などの手続きの合理化をさらに進める。工事情報等共有システム『Hi-TeLus(ハイテラス)』も適宜改良する。コストや工期との兼ね合いもあるが、現場の省力化につながる工法や部材を積極的に導入したい」
 「社内向けでは、3年前にDX戦略を取りまとめた。さまざまなデータを分析し、新たな取り組みを検討する。今年から生成AI(人工知能)を使い取り組みたいことについて社内の意見を集めている。何かうまくいくものがあれば、全社的に取り組みたい」
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 (うえまつ・えいじ)1984年3月京大大学院工学研究科修了後、同年4月阪神高速道路公団(現阪神高速道路会社)入社。2017年7月経営企画部長、21年7月常務執行役員、22年代表取締役兼専務執行役員などを歴任。登山が趣味。65歳。
◆記者の目
 趣味の登山は、かつては沢登りや雪山登山などもこなすほど。吉田松陰の言葉である「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし」がモットー。言葉どおり、人材確保や技術開発、働き方改革でも次々と新たな取り組みに挑戦し続ける行動力の持ち主だ。建設業界を「なくてはならないパートナー」と認識し、「共に持続可能な産業にしよう」と呼び掛ける。