【法の解釈・具体例を明確化/柴山課長「商習慣改め取引適正化」】
公正取引員会は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)を改正した「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(中小受託取引適正化法)」が2026年1月1日に施行され、通称『取適法(とりてきほう)』に変わることを受け、取適法の「運用基準(通達)」を公表した。同法で追加した禁止行為などがどのようなものなのか、その解釈と具体例を明確化している。公取委経済取引局取引部の柴山豊樹企業取引課長は、「建設工事そのものは建設業法で規制しているため、下請法と同様、取適法でも対象外だが、それ以外は関係し得る。商習慣を改め取引を適正化するため、その内容を建設業にも理解してもらい対応してほしい」と語る。 現行の下請法は、下請け取引の公正化と下請け事業者の利益保護という目的を果たすため、親事業者に義務や禁止行為を課してきた。しかし最近は、労務費や原材料費、エネルギーコストの上昇などの課題に直面し、現行の規定だけでは目的の達成が困難な状況が顕在化してる。
柴山課長は「物価上昇を上回る賃上げを実現するには、事業者がその原資を確保しなければならない。それには生産性向上と同時に、サプライチェーン全体での適切な価格転嫁の定着が重要だ。しかし、コスト上昇に対応した価格転嫁は難しく、特に協議に応じてもらえないケースも多々ある。そこで今回の改正では、協議に応じずに一方的に価格決定することを禁ずるなど、デフレ時代に形成された商慣習を改めることを目指している」と説明する。
このため、法改正の1番目の柱には「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」を据えた。「受注者にとって価格交渉の“武器”となる重要な改正だ」と柴山課長は強調する。手形払いなどの禁止や、これまで対象外だった発荷主が運送事業主に物品運送を委託する取引の同法対象への追加、減資などによる法逃れを防ぐための従業員数基準の新たな追加なども行った。
さらに、用語を見直す。「親」や「下請け」といった言葉が上下関係を想起させるため適切ではないと考え、下請け事業者は「中小受託事業者」、親事業者は「委託事業者」に変わる。
こうした法改正の内容を具体的に落とし込んだものが、取適法の運用基準(通達)だ。禁止行為などの解釈と具体例を明確化した。例えば、協議に応じない一方的な代金決定の禁止の「協議に応じない」とはどういう状態なのか。
協議の求めを明示的に拒む場合だけでなく、協議の求めを無視したり、協議の実施を繰り返し先延ばしにしたりして協議の実施を困難にさせる場合も含まれる。形式的に応じるだけでは不十分で、“実効的”な協議が求められるということだ。
手形払いなどの禁止については、電子記録債権などで支払う場合でも、支払期日までに代金に相当する金銭を受注者が得ることが困難なケースは、その使用が支払い遅延に該当することを明確にしている。例えば、支払期日までに支払うが、5%割り引くといった場合でも、全額満額得られないため違反となる。同法違反の場合、勧告などの行政指導を受けて、企業名が公表される。
来年1月からは取適法とその運用基準が施行されるほか、同法と表裏一体の下請中小企業振興法(下請振興法)の改正も、「受託中小企業振興法(振興法)」として同日施行され、同法に基づく改正振興基準も施行される。振興法は建設業も対象となる法律だ。
柴山課長は「建設工事の部分は従来と同様、取適法と直接関係ないかもしれないが、それ以外の取引では対象になることもある。情報をよく確認し、法令違反とならないよう留意してほしい。11月中には詳しい具体例を載せた講習会テキストを改正する。説明会も実施しており、多くの人に参加してほしい」と語る。
公正取引員会は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)を改正した「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(中小受託取引適正化法)」が2026年1月1日に施行され、通称『取適法(とりてきほう)』に変わることを受け、取適法の「運用基準(通達)」を公表した。同法で追加した禁止行為などがどのようなものなのか、その解釈と具体例を明確化している。公取委経済取引局取引部の柴山豊樹企業取引課長は、「建設工事そのものは建設業法で規制しているため、下請法と同様、取適法でも対象外だが、それ以外は関係し得る。商習慣を改め取引を適正化するため、その内容を建設業にも理解してもらい対応してほしい」と語る。 現行の下請法は、下請け取引の公正化と下請け事業者の利益保護という目的を果たすため、親事業者に義務や禁止行為を課してきた。しかし最近は、労務費や原材料費、エネルギーコストの上昇などの課題に直面し、現行の規定だけでは目的の達成が困難な状況が顕在化してる。
柴山課長は「物価上昇を上回る賃上げを実現するには、事業者がその原資を確保しなければならない。それには生産性向上と同時に、サプライチェーン全体での適切な価格転嫁の定着が重要だ。しかし、コスト上昇に対応した価格転嫁は難しく、特に協議に応じてもらえないケースも多々ある。そこで今回の改正では、協議に応じずに一方的に価格決定することを禁ずるなど、デフレ時代に形成された商慣習を改めることを目指している」と説明する。
このため、法改正の1番目の柱には「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」を据えた。「受注者にとって価格交渉の“武器”となる重要な改正だ」と柴山課長は強調する。手形払いなどの禁止や、これまで対象外だった発荷主が運送事業主に物品運送を委託する取引の同法対象への追加、減資などによる法逃れを防ぐための従業員数基準の新たな追加なども行った。
さらに、用語を見直す。「親」や「下請け」といった言葉が上下関係を想起させるため適切ではないと考え、下請け事業者は「中小受託事業者」、親事業者は「委託事業者」に変わる。
こうした法改正の内容を具体的に落とし込んだものが、取適法の運用基準(通達)だ。禁止行為などの解釈と具体例を明確化した。例えば、協議に応じない一方的な代金決定の禁止の「協議に応じない」とはどういう状態なのか。
協議の求めを明示的に拒む場合だけでなく、協議の求めを無視したり、協議の実施を繰り返し先延ばしにしたりして協議の実施を困難にさせる場合も含まれる。形式的に応じるだけでは不十分で、“実効的”な協議が求められるということだ。
手形払いなどの禁止については、電子記録債権などで支払う場合でも、支払期日までに代金に相当する金銭を受注者が得ることが困難なケースは、その使用が支払い遅延に該当することを明確にしている。例えば、支払期日までに支払うが、5%割り引くといった場合でも、全額満額得られないため違反となる。同法違反の場合、勧告などの行政指導を受けて、企業名が公表される。
来年1月からは取適法とその運用基準が施行されるほか、同法と表裏一体の下請中小企業振興法(下請振興法)の改正も、「受託中小企業振興法(振興法)」として同日施行され、同法に基づく改正振興基準も施行される。振興法は建設業も対象となる法律だ。
柴山課長は「建設工事の部分は従来と同様、取適法と直接関係ないかもしれないが、それ以外の取引では対象になることもある。情報をよく確認し、法令違反とならないよう留意してほしい。11月中には詳しい具体例を載せた講習会テキストを改正する。説明会も実施しており、多くの人に参加してほしい」と語る。