3Dプリンターで護岸ブロック/省人・省力化、安全性向上/荒川調節池事務所が試行 | 建設通信新聞Digital

11月19日 水曜日

行政

3Dプリンターで護岸ブロック/省人・省力化、安全性向上/荒川調節池事務所が試行

 関東地方整備局荒川調節池工事事務所は、荒川第二調節池の工事現場で池内水路の護岸ブロックの一部を、建設用3Dプリンターで試行的に製作・設置する。BIM/CIM活用の一環として、3Dプリンターを導入することで現場作業の省人化・省力化を目指すとしている。
 試行現場は「令和4年度荒川第二調節池排水門及び囲繞堤新設工事」(施工=飛島建設)。護岸ブロック曲線部の施工に当たり、従来は折れ点を複数箇所設けて、施工箇所の形状に合わせたブロックの切断作業や、端部に生じた隙間への場所打ちコンクリート作業などを実施していた。
 今回、3Dプリンターであらかじめブロックを作成することで、施工手間の削減と回転工具の使用や斜面作業が減少することによる安全性向上のほか、省人・省力化の実現が期待されている。
 試行は、池内水路側取付護岸の施工範囲600㎡のうち、72㎡を対象とした。従来方法と比較して施工期間を2日短縮、約10人工の削減を見込んでいる。「直轄河川工事での3Dプリンターの活用は荒川水系では初」(同事務所)という。
 使用する3DプリンターはPolyuse(ポリウス、東京都港区)社製で、フレームと吹き付けノズルを備えた本体と圧力計やミキサーを設けた制御ユニットで構成する。造形物は、フレーム内でCADで作成した3次元データに基づき、ノズルから射出するモルタルを積み重ねて製作する。プリンター本体の大きさは横3.7m、縦3.4m、高さ2.8mで、最大全幅3m、奥行2.5m、高さ1.9mの製品が製造できる。
 工事で設置するブロックは57枚で、縦1m、横0.75m-1.89m。厚さは16cm。中空部にモルタルを充●(じゅうてん)して設置する。製作したブロックには嵌合(かんごう)部を設けている。1枚を約2時間で製作可能という。
 14日に同現場で発注者を対象とした実演見学会を開いた。整備局職員や沿川自治体職員など約80人が参加し、3Dプリンターによるモルタル製護岸ブロックの製作プロセスを見学した=写真。
 見学会では、ポリウス社の大岡航代表取締役がプリンターの概要や造形のメカニズムを紹介。3Dプリンターがモルタルを積層させながら造形物を製作する過程を説明した。
 同事務所の米沢拓繁所長は「建設用3Dプリンターは近年、全国での施工事例や土木学会で技術指針案が報告されており、省人化や工程短縮などさまざまな場面での活用が期待されている」と述べた。