国土交通省は、建設から維持管理までインフラ分野のプロセス全体でＡＩ（人工知能）を徹底活用する。１日に開かれた「ｉ－Ｃｏｎｓｔｒｕｃｔｉｏｎ・インフラＤＸ推進コンソーシアム」で方針を打ち出した。高度化するＡＩ技術を採り入れ、ｉ－Ｃｏｎｓｔｒｕｃｔｉｏｎ２．０やインフラ分野のＤＸ（デジタルトランスフォーメーション）を次のステージに押し上げる。
　開会に当たり、佐々木紀副大臣は「ＡＩの徹底活用は現場の景色を一変させる可能性を秘める。受発注者双方でＡＩを活用し、生産性を飛躍的に向上させ、業務を大きく変革させることを期待している。データやデジタル技術、ＡＩなどあらゆるＤＸを駆使することで建設産業を新３Ｋの産業へと変革することを目指す」と表明した＝写真。
　人口減少やインフラの老朽化、災害の頻発化など社会資本整備を取り巻く情勢変化を踏まえ、ＡＩを「不可欠な戦略ツール」と位置付ける。あらゆるＡＩ技術を徹底活用し、建設現場の生産性向上、維持管理の高度化、オープンイノベーションを加速させる。
　建設現場や維持管理の高度化に向けては、現実世界でロボットを自律化させる「フィジカルＡＩ」の活用に向けた開発や実証を推進する。国土交通データプラットフォームから対話形式でデータを取得できる「ＭＣＰサーバー」を利用したオープンイノベーションや、ＡＩを活用したインフラの異常検知の精度向上なども視野に入れる。
　会合では受発注者にＡＩの利活用を促す施策の方向性などを議論。増本大器富士通フェローは、ＡＩ活用に関するベストプラクティスの共有やインセンティブ（優遇措置）の提供などで、各自の取り組みを後押しするよう説いた。
　小澤一雅政策研究大学院大教授は、ＡＩ活用に必要なデータについて「過去のデータも含め、信頼できるデータとして届けられる仕組みが必要だ」と述べ、国交省によるデータ提供体制の整備を求めた。安宅和人慶大環境情報学部教授は「人工制約が最大のボトルネック」と強調し、ＡＩ活用の効果測定に向けては省人化に重点を置いたＫＰＩ（重要業績指標）を設定するよう提起した。