三機工業の石田博一社長と、その後任として4月1日付で社長に就く名古屋和宏取締役兼常務執行役員コーポレート本部長は20日、東京都内で会見した。三井物産出身の元商社マンという異色の経歴を持つ名古屋次期社長は、自身が策定を主導した中期経営計画で掲げる「深化と共創」に加え、「不変と進化」を重視する経営方針を打ち出した。三井物産で得た知見を生かし、海外事業などの成長に向けてM&A(企業の合併・買収)に注力する。
25年4月に創立100周年を迎えた三機工業は三井グループだが、三井物産出身の社長は5代目までさかのぼる。名古屋次期社長は、100年にわたって顧客や協力会社を大切にしてきた企業姿勢と、顧客・協力会社との信頼関係を「不変」に位置付けた。他方で、時代の変化に即して変える「進化」の具体策には▽事業ポートフォリオ戦略▽共創の実現に向けたM&A推進体制の強化▽挑戦する企業風土の覚醒--の3点を挙げた。
主力の建築設備事業をさらに伸ばし、500億円の成長投資枠を活用するM&Aなどによって海外事業とプラント設備事業の成長も図ることで、「より競争力のある事業ポートフォリオを構築していきたい」と力を込めた。建築設備事業については、人材不足がより深刻化しても持続的に事業を展開できるように「BIMを活用した施工プロセスのデジタル改革、バックオフィス機能の高度化、資機材の適時適所配送、オフサイト工法の推進など、あらゆる工程でスピード感のある進化を行い、生産性向上を果たしていく」と意気込んだ。
海外事業では、3月に持ち分法適用関連会社化するマレーシアのES Matrix社を成功事例に示しながら、「地場の会社と組み、よりスピーディーに事業を立ち上げていく手法は有効。マレーシアにとどめず、相性の良い有望な相手がいれば、M&Aの手法を使って展開を広げていきたい」と述べ、中国、タイ、マレーシア以外にも海外拠点を広げる方向性を打ち出した。M&A推進体制の強化に向けては、「M&A推進部門に引き続き自ら積極的に関わり、より決断を早くして実効性を高めていく」と強調した。
「重要なパートナー」と位置付ける協力会社にも言及した。「高齢化や後継者不足などの課題を抱え、事業承継が難しい協力会社がいる。事業継続を一緒に考えていきたい」とし、M&Aによる協力会社同士の統合やパートナーとのマッチングなどの支援に意欲を見せた。
さらに、12人でスタートした創立当初に比べて挑戦する意識が弱まっているとの見方を示し、「新しい物事に積極的にチャレンジしていく企業風土をいま一度復活させたい」と意気込んだ。
4月1日付で代表取締役兼会長に就く石田社長は、このタイミングで社長交代する理由に、25年4月に創立100周年の大きな節目を迎えたことや、AI(人工知能)の進化など社会のニーズが大きく変化していることなどを挙げた。その上で、デジタル時代を切り開く先見性と実行力、グローバル市場での豊富な経験と戦略構築力を持つ点を評価して、名古屋氏を後任に選んだことを明かした。
