【現場経験礎に最高の会社へ】
佐藤秀の新社長に、植木宣一郎取締役兼常務執行役員工務本部長が4月1日付で就任する。約30年にわたる現場経験を礎に「最高の建築会社でありたい」との思いを経営に落とし込む。2029年1月の創業100周年を見据え、「佐藤秀ブランドへの自覚と誇り」を掲げ、次世代へ強いバトンを渡す姿勢を示す。大成建設グループのシナジーを生かし、唯一無二の技術力を武器に持続的成長をどう描くのか。話を聞いた。
--抱負と注力分野は
「最大のミッションは、有望な次世代の社員たちに、誇りを持てる『強い会社』を引き継ぐことだ。当社には、良いものを見極め実現する力が備わっているが、社員がその価値を十分に自覚できていない面がある。まずは自分たちがオンリーワンの技術を持っていることに自信を持ち、それを求めるお客さまとの関係をさらに深めていきたい。具体的には自社大工による社寺建築や伝統建築の拡大、さらには販売価格が1部屋10億-100億円規模の超高級マンションなど、高い付加価値が求められる分野に注力していく」
--大成建設グループのシナジーは
「グループ入りして2年超が経過した。内部統制の整備により風通しが劇的に良くなった。グループの信用力により、入社希望者は間違いなく増えたと感じている。ICTの導入による生産性や品質の向上、調達面のメリットを生かすとともに、これまで単独では難しかった重要文化財の入札などにも挑戦したい。一方、創業者のDNAである『品質への徹底したこだわり』を貫いていく」
--中長期の展望は
「30年に向けた『長期ビジョン』に基づき、受注200億円、粗利10%という目標を確実に達成したい。単に規模を追うのではなく、1件当たりの価値を高める戦略だ。また、古くからのお客さまとの信頼関係をベースにした、高級リニューアル部門の強化も新たな柱として育てていきたい」
--人材育成の方針は
「社員のエンゲージメントと幸福感を高めることが、人的投資の中心となるだろう。1級建築士などの資格取得に向けた勉強会を設けるなど、会社が技術力向上を全力でバックアップする。全社員の顔が見える規模だからこそ、一人ひとりを正当に評価し、丁寧にフィードバックすることで、『自分が会社を引っ張っている』という実感を育みたい」
--社員に向けて
「現場こそが主役であり、内勤の社員は現場を全力でフォローする立場であってほしい。お互いをリスペクトし、喜怒哀楽をともにし、成功も失敗も分かち合える『ファミリー』のような組織を目指す。私はこれからも一人ひとりの顔を覚え、対話を大切にしながら、ともに最高の建築会社を作っていく」
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(うえき・せんいちろう)1990年3月大阪工大工学部建築学科卒後、同年4月藤木工務店入社。2003年6月佐藤秀入社。18年6月執行役員建築本部建築部長、20年6月取締役兼執行役員建築本部副本部長を経て、24年6月から現職。趣味は海釣り。愛妻家として知られ、休日は妻と旅行や買い物に出かけるのが元気の源。滋賀県出身。68年3月2日生まれ、58歳。
「せっかちで口は悪いが、すぐ忘れる」と自ら笑うその人柄は、社内で「親分」と慕われる存在だ。約30年に及ぶ現場経験で培われた「迷ったら壊せ、やり直せ」という信念は、効率至上の現代において、失われつつある職人の矜持(きょうじ)がにじむ。大成建設グループの一員となった今も、“佐藤秀らしさ”を貫こうとする姿勢と決断力が、伝統ある同社を次の100年へと導いていく。
