【5業態の強み生かしたい】
類設計室の新社長に、岩井裕介氏が就いた。全員経営をモットーとする同社で設計畑を一貫して歩み、文教施設をはじめ数多くのプロジェクトに携わってきた。社内だけでなくクライアントや市民とも共創し、取り組みを掛け合わせることで、共創経営の新たな可能性を探る考えだ。「われわれの強みを生かし、社会の期待に応えていきたい」と話す岩井社長に、抱負や当面の方針などについて聞いた。
--抱負を
「阿部紘前社長の旗振りの下、経営の在り方を根本から見つめ直し、2023年度から25年度まで『経営基盤整備』に取り組んできた。26年度からは新たな中期経営計画に基づき『成長基盤整備』にかじを切る」
「これまで以上に『共創』を強化し、現在ある設計・営繕・教育・農園・地域共創の5業態に軸足を置きながら事業を掛け合わせ、さらなる進化と拡大を図っていく。例えば建築と教育を掛け合わせた『こども建築塾』はこれまで近畿圏中心で実施していたが、今年度から首都圏でも積極的に展開していく」
「中期経営計画の最終年には社員数を現在の360人から500人規模に、売り上げは現在の65億円規模を100億円規模に近づけたい。数字をただいたずらに追いかけるつもりはない。開かれた企業組織として、社員が知恵を出し合い、命が響き合う、社会と地続きでつながり、活力が響き合う『共創の森』を目指していく」
--設計・営繕事業の今後について
「建築系の仕事は、現在売り上げの過半を占めている。企業のR&D(研究開発)関連や教育施設、図書館や庁舎といった公共分野で強みを発揮してきた。近年資材価格の高騰により、設備投資を見直すケースも出ている。だが当社のクライアントの多くは中長期の視点に立って、計画を進めている。クライアントとのパートナーシップを大切にしながら、新たな領域も狙う」
「木造建築の普及にも力を入れたい。サプライチェーンを含め、資材を継続的に供給できる仕組みづくりから提案し、地域社会とのつながりを探っていく」
「クライアントの期待に広く応えるため、営繕事業部を25年に設立し、設計事業部との『両利き』体制を構築した。バリューアップやリノベーションの相談も多く受けている。成長が見込める領域でもあり、営繕事業の売り上げを伸ばすことで経営の安定化につなげたい」
--人材育成について
「今春は30人が入社したが、うち建築系の人材が半数以上を占めている。人材の採用と育成には、これまで以上に積極的に取り組む」
「『ナレッジをブレインに』というコンセプトの下、業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推し進めた。現在はAI(人工知能)を活用した社内データベース(DB)の構築にも取り組んでいる。単なる図面や記録集ではなく、これまで個々の社員にひも付いていた経験値など、幅広いナレッジを取り込んだDBを目指している。若い設計者が一人前に育つ時間の短縮につなげたい」
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(いわい・ゆうすけ)1996年3月東大大学院工学系研究科建築学専攻修了、類設計室入社。設計事業部の意匠部と企画部に所属。2006年東京設計室長、25年経営統括部長などを歴任した。山口県出身。71年11月25日生まれ、54歳。
◆記者の目
「考える」ことが好きで、全員経営を掲げる類設計室に入った。「組織事務所の割に挑戦的で、荒削りな作風が好きだった」と当時を振り返る。入社した96年は阪神・淡路大震災発生の翌年で、震災復興関連の仕事に奔走した。2006年から東京事務所に移り教育系施設をはじめとする実績を拡大、事務所の躍進を支えた。中でも母校・東大の「東京大学21KOMCEE」は思い出深いプロジェクトの一つ。「人に活力を与える空間づくりに、これからもこだわっていきたい」
