【水性塗料に移行の動きも/工事に滞りも】
中東情勢の悪化に伴い、原油由来のナフサを原料とする塗装用シンナーの調達が困難を極め、油性塗料の希釈や容器などの洗浄にシンナーを使用する塗装工事業者が調達不安に陥っている。現在もホルムズ海峡の緊張状態は続いており、事態が長期化すれば、建設工事の停滞、人手不足の深刻化に拍車が掛かりそうだ。一方、水で希釈する水性塗料に移行する動きも強まっている。
シンナーを扱うメーカー各社は値上げや出荷制限に動いている。日本ペイントは3月19日から建築用シンナー類全般などを75%値上げしたほか、関西ペイントは13日出荷分からシンナー製品全般を50%値上げした。エスケー化研は4月1日から30-80%値上げしたシンナー製品を含む主力溶剤製品について、21日出荷分から追加で20-30%値上げしている。
出荷を停止している中堅メーカーもある。水谷ペイントは3月30日から、菊水化学工業は6日からシンナー製品の出荷を停止している。
東京都台東区で建築塗装業を営む東洋塗装の木村行男社長は「シンナーの在庫は今の状況が続けばあと1カ月程度で尽きる」と不安を募らせる。
特に深刻なのは、塗装溶剤を入れる容器や、はけの洗浄に不可欠なラッカーシンナーだ。メーカーの出荷制限により、ほとんど手に入らないという。既に在庫は通常の1割程度。バケツに入ったつけ置き用のシンナーをのぞいて見ると、普段より長く使っているため、ドロドロの状態だった。油性塗料の希釈に使用するシンナーも平常時の約3割の在庫量と厳しく、希望量を入手できないという。「ゴールデンウイーク明けも今の状況が続くと事態はさらに深刻になる」と声を落とす。
塗装工事業者で構成する日本塗装工業会(日塗装)が会員企業を対象に行ったアンケートでは、「シンナーが通常どおり手に入る」と回答した企業は2.7%にとどまる。シンナーで洗浄して再利用するはけやローラーを使い捨てにするケースもあるという。
また、「受注案件に影響が出ており、会社の運営が危ぶまれる」「従業員確保も厳しい中、物価上昇に伴い経営も非常に苦しい」「仕事にならないのでこのままでは資金繰りも厳しくなりそうだ」と悲痛な声が上がる。
日塗装は14日、国土交通省に要望書を提出し、現場の窮状を訴えるとともにシンナーなどの供給不安への対応を求めた。加藤憲利会長は「実際に多くの工事が滞っている。人手不足の状況下で、仕事が少なくなると離職者が増え、戻ってこなくなる。そういった最悪の状況を避けたい」と訴える。
こうした中、塗装工事業者では水性塗料への移行の動きもみられる。水で希釈できる上、機能的にも一部の用途を除いて油性塗料に劣らないという。値上がりした油性塗料に比べると多少安価な場合もある。
日塗装のアンケートでは、シンナーの供給不足への対応策について回答した360社のうち57社が水性塗料への切り替えの実施や検討を行っている。
大手ペイントメーカーによると、「水性塗料の受注量は前年同時期に比べて約2倍になった商品もある」という。中堅メーカーは「油性塗料からの移行で需要が増えていることや、原材料となる樹脂などが石油由来であることから一部出荷停止にしている製品も出てきている」と明かす。
政府は「石油製品は日本全体として必要となる量を確保できており、流通の目詰まりも解消が進んでいる」と説明するほか、ホルムズ海峡を回避した石油の代替調達も急いでいる。早期の安定供給が待たれる。
