クローズアップ・ASHRAE Technology Award/コミッショニング部門で1位/久米設計 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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クローズアップ・ASHRAE Technology Award/コミッショニング部門で1位/久米設計

横山氏
受賞した新本館・研究棟
【愛知県環境調査C・衛生研究所新本館・研究棟/日本での普及に期待】
 久米設計がコミッショニング(性能検証)責任者を担当した愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所新本館・研究棟が、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)の主催するASHRAE Technology Award「公共施設〈教育施設以外〉コミッショニング」部門で1位を受賞した。大成建設と名古屋大学との共同受賞で、同部門での1位受賞は国内初。建築設備の性能を設計から運用段階に至るまで検証し、改善に取り組むコミッショニングが「今回の受賞をきっかけに日本で普及していってほしい」と久米設計の横山大毅環境技術本部ダイレクターは思いを込める。 愛知県が基本設計先行型BTO(建設・譲渡・運営)方式で整備した愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所新本館・研究棟は、基本設計・実施設計監修・監理を久米設計、実施設計・施工を大成建設が担当。運営者を含め、各者連携しながらコミッショニングを実施することで、計画値でのNearly ZEB(ネットゼロ・エネルギー・ビル)を達成した。
 計画上での達成にとどまらず、実測値での達成を目指し、2019年の供用開始から粘り強く運用改善を実施。数年でNearly ZEBを実現し、運用開始後3年目には、1次エネルギー消費量を101%削減し、net-ZEB達成を果たした。
 コミッショニングは第三者的な視点が大切となるため、設計担当者とは別にコミッショニングチームを組成し性能検証を進めた。それを指揮したのが横山ダイレクターだ。
 ZEB化を目指すに際し、一例では、太陽熱とガスマイクロコージェネレーションの2種類の排温水を1台で同時回収可能な2温水回収ジェネリンクシステムを採用し、この機器をさらに、熱駆動ヒートポンプとして運用できるように新規開発した。
 「原理は既存の技術を組み合わせた」システムとはいえ、実際に運用しなければ分からない課題も発生し、その都度、一つひとつの事象に向き合った。横山ダイレクターは「運用初期はうまく作動しないこともあったが、地元・名古屋大学の先生方にも参画してもらい、改善に取り組んだ」と振り返る。井水の温度が想定より低いという課題に対して、水量バランスを調整するという解を導くなど、工夫を重ねていった。
 ZEBが当たり前の時代になってきている今、必然的に設備は高度化。こうした設備こそ「性能検証が重要だ。カーボンニュートラルの大切な要素には時間軸があり、運用段階で継続して改善を重ねることでその設備が真の力を発揮する。継続により知見も生まれ、さまざまなシステムの普及につながる」とコミッショニングの意義を強調し、その普及に努めていく考えを示す。
 久米設計としては今回の受賞で、昨年の帯広厚生病院での世界最優秀賞受賞に続き、2年連続の受賞となった。