人的資本投資強化を支援/技術の国際展開 信頼性証明必要/社整審・交政審WGが提言案 | 建設通信新聞Digital

5月2日 金曜日

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人的資本投資強化を支援/技術の国際展開 信頼性証明必要/社整審・交政審WGが提言案

 国土交通大臣の諮問機関である社会資本整備審議会と交通政策審議会の分野横断的技術政策ワーキンググループ(WG)は13日、第8回会合を開き、第6期国土交通省技術基本計画への反映を見据えた技術政策の提言案を大筋でまとめた。イノベーションを創出する人材育成の重要性を指摘し、建設業などの企業が人的資本投資を強化できるよう、国は積極的に支援する必要があるとした。日本で開発された技術を国際展開する方向性も示し、その実現に向けて技術の信頼性を証明する仕組みの構築などを国に求めた。 第8回会合で、国交省が提示した最終取りまとめ案の文言修正などを小澤一雅座長(政策研究大学院大教授)に一任するとともに、最終取りまとめのサブタイトルを「国による技術開発・社会実装のけん引と人材の気概を引き出す戦略的投資」に決めた=写真。沓掛敏夫国交省官房技術審議官は「次期国土交通省技術基本計画に反映し、これからの国土交通行政に最大限活用していきたい」と話した。2025年度に第6期計画を策定する予定だ。
 最終取りまとめ案は、社会実装を含む技術開発の在り方を示した中間取りまとめに、人材と国際展開の方向性を追記する形となっている。技術開発の在り方は、中間取りまとめから大きな変更なし。
 人材の方向性としては、イノベーションが企業の成長を促すとの考えから、人材育成に要する予算をコストではなく資本と捉える必要性を示した上で、従来の育成方法にこだわらず、人事制度を含め、技術者らが自発的に技術力を高められる環境を整備すべきとした。
 その実現に向けては、建設業の人的資本投資額が他産業より相対的に低いことから、企業は人的資本投資を強化すべきとし、国には企業のそうした取り組みを積極的に支援するよう求めた。併せて、企業はジョブ型雇用制度など多様な人材の処遇を確保できる人事登用の仕組みを大胆に導入すべきとした。
 官民の垣根を越えて業界全体で職種や組織の枠にとらわれない人材の流動化を図る必要性も示し、国は技術者データベースの整備などによって人材流動化を促す必要があるとしている。また、国や地方自治体を含む発注者が新技術を意欲的に導入するマインドを持つべきとし、それを組織内で培う仕組みを設ける必要性を示した。
 国際展開では、日本で開発された技術の信頼性などを証明する仕組みを国が設けるべきとした。相手国と証明書の有効性について合意を取り交わしながら、直轄工事で活用した実績の英語による証明書を新技術情報提供システム(NETIS)などで発行することや、第三者機関が技術の証明書を発行することを具体の取り組みに例示している。
 また、チームジャパンとして産学官が一体的に技術の国際展開を推進できるよう、在外公館、国際学会、大学が持つ海外大学とのネットワーク、現地のパートナー企業などを活用しながら、国が現地の基準やニーズなどを把握して発信する体制を構築すべきとした。
 小澤座長は会合終了後に取材に応じ、人材の方向性について「若者にとって魅力的な職場環境をつくっていくためにどういうことを考えていかなければいけないかという意味で、メッセージを出した」と狙いを語った。その上で、人材流動化などを念頭に「建設産業全体でコンセンサスが取れていない部分はたくさんある」と指摘し、「産業全体での議論に広げ、産業全体でプラスになる仕組みをつくっていけるか」を今後のポイントに挙げた。