新社長インタビュー・向井建設 大神光司氏(おおがみ・みつし) | 建設通信新聞Digital

5月2日 金曜日

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新社長インタビュー・向井建設 大神光司氏(おおがみ・みつし)

 向井建設の社長に、大神光司氏が就いて3カ月余りが経過した。躯体の専門工事業の大手として建設現場を支える同社に入社以来、建築の現業で手腕を振るい、その後は建築部門の責任者としてかじを取ってきた。それが社長となり、3本柱の一つである関東の建築だけでなく、関東の土木部門と東北支店も担うことになった大神社長は「責任を持って社長業に取り組みたい。『総合躯体建設会社』を目指す」と前を向く。その実現に向け、どのように取り組むのか。大神新社長に聞いた。【総合躯体建設会社へ成長】
--抱負を
 「関東の土木や東北支店の経験はないが、各セクションの責任者が非常に協力的に支えてくれている。そうした中で“着眼大局・着手小局”の姿勢で、関東の建築を加えた三つのセクション全体をしっかりと見て判断しながら経営に当たり、目標を達成した前期からの業績をさらに伸ばしていきたい」
 「社長になったからには、デジタル化やAI(人工知能)に挑戦しながら、業界の変化に適応しつつ会社を成長させる。企業は人で成り立っており、人材採用に力を入れる。未来社会への貢献も企業として果たしていきたい」
--取り巻く環境は
 「大型再開発などの需要により、3年ぐらい先までの案件はある程度見えている状況ではある。ただ、元請けは管理者不足の課題を抱えている。その業務をカバーできることが当社の魅力であり、期待されていることだ。それにしっかりと応えていく。ゼネコンとしてではなく、サブコンとしての専門性を生かしながら、躯体工事の周辺工種にさらに取り組むことで、顧客ニーズに高い能力で応えられる『総合躯体建設会社』への成長を目指す」
--その成長へ何を
 「人材の育成が欠かせない。20代中心の若手を対象とした『躯体管理育成塾』を設け、実物件での経験を教育に生かしている。 これを今年から新入社員の必須教育とし、躯体工事の管理の仕方を身に付けるようにしている。同時にデジタル化も進め、 現在構築中の管理システムを導入する。これで現場任せにせず、工事開始前に必要な取り組みを徹底し、安全や品質、コスト面などのリスク回避に役立てる」
--人材確保は
 「先日、管理社員による高校訪問を開始した。今年は220校を予定している。本社を構える地元・東京の学校との関係性を強めるため、密着型の出前講座やインターンシップを行い、この職種を知ってもらい魅力を伝えている。メタバースを使った会社紹介なども進める。外国人も採用しており、ミャンマーに軸を置いて取り組んでいる。年2回の受け入れで、今年で3年目となり、しっかりと育てていく。地政学的リスクがあるため、早い情報を得ながら続けたい。頑張っている社員のためにベースアップも決めており、4月から反映する」
--思い描く未来絵図は
 「とび工でありながらも、鉄筋を組んだりコンクリートを打設したりする時代が来るかもしれない。当社はあくまでも専門工事業として展開するが、そこに軸を置こうとすると、やはり『総合躯体建設会社』へとビジネスモデルを転換していく必要がある」

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 2000年3月長崎総合科学大工学部建築学科卒後、同年4月向井建設入社。19年11月取締役東京本社営業統括部部長、22年4月取締役東京本社建築統括部部長、同年11月常務東京本社建築統括部部長を経て、24年11月から現職。学生時代に汗を流した陸上で、中距離ランナーとして北九州チャンピオンに輝く。座右の銘は不撓(ふとう)不屈。福岡県出身。1977年7月15日生まれ、47歳。
■記者の目
 明るく人当たりの良さが印象的だ。入社当時、スーパーゼネコンに出向し、そこでの4年間で師となる存在に出会い、現場のイロハを身に付けた。そこで養った『俯瞰(ふかん)する力』が、これまでの現場監督や、現在の経営面でも生かされていると振り返る。それに加えて、陸上競技で培った不撓不屈の精神。明るい表情の中にも、思い描く『総合躯体建設会社』を実現しようとする強い決意がひしひしと伝わってきた。