「ついにこの時がきたか」。インフロニア・ホールディングス(HD)による三井住友建設の買収発表に対して、ある準大手ゼネコントップは感心しながらそう語った。岐部一誠社長が2021年のインフロニアHD設立時から可能性を探ってきたという建設会社との統合へ大きな一歩を踏み出した。三井建設と住友建設の合併から20年余り、三井住友建設側にとっても重い決断となった。今回の経営統合が業界関係者に与えたインパクトは大きい。両社の社長が強調する、規模を追わない“差別化”戦略に熱視線が注がれる。 =関連3面 「三井住友建設を心配する声はあったが、まさかという感じだ。インフロニアHDは本当にM&A(企業の合併・買収)に積極的であり、さすがと思った」(準大手ゼネコントップ)と多くの関係者が驚きを隠さない。担い手不足が深刻化する中、「人材を確保する企図もあったのではないか。当社も今後、同業でのM&Aもあり得る」(大手ゼネコン幹部社員)との声もある。
一方で、「単純な足し算になるかは分からない。お互い(の強みや弱み)を補完できる関係なら効果はあると思うが、今回の場合はどうか」(大手ゼネコン幹部)、「結果的な規模の利益追求だとしたら、個人的には魅力的には映らない」(地方の準大手ゼネコントップ)といった慎重な意見も聞かれた。
岐部社長はそうした指摘を真っ向から否定する。「売上高を目指してやっているわけではない。スーパーゼネコンに追いつくなどは全く考えていない。そうではなくて、請負と脱請負の融合という、日本で唯一のモデルを目指している」と力を込めた。買収する三井住友建設側の間接部門などに対する人員整理の可能性については、「われわれも人材が足りないぐらいだ。グループの中で融通し合うことも含めて、人材を整理してコストメリットを創出することは考えてない」と断言した。
◆業界再編の契機にも
それぞれの傘下にいる道路舗装会社の位置付けにも注目が集まる。「ゆっくり時間をかけて検討する」(岐部社長)としているが、インフロニアHDと三井住友建設のシナジーと同様に、前田道路と三井住建道路の間でも同様の効果が想定できる。例えば、前田道路は関東に複数の拠点があるが高い繁忙状態にあるという。その補完を三井住建道路が担えるほか、九州、北海道といった同社が強みを持つ地域へのさらなる展開も見込める。合材工場の空白地帯を埋め、お互いのシェア拡大といったメリットも期待される。
道路建設会社の幹部は「業界再編の象徴と言えるのではないか。長期的に見れば、市場規模は縮小していく。われわれ(舗装業界)の事業量を見ても、アスファルト合材の出荷量が連続で過去最低を記録し、プラントの閉鎖も増えている。現在の企業数を維持できるとは思えない。どういう形か分からないが今後もM&Aは続くだろう」と今後の波及の可能性を指摘する。
◆ホワイトナイトではない
今回の統合で、もう一つ注目が集まったのはアクティビストの影響だ。三井住友建設の大株主には旧村上ファンド系の投資会社が名を連ねるが、14日の記者会見ではその関与への質問が挙がった。三井住友建設の柴田敏雄社長は「彼らは建設業界に対して、基本的には再編論者であり、もう少し社数を減らすべきだという話をされていた。ただ、今回の経営統合はファンドによる提案では一切ない」と内幕を明かした。
同日夜のアナリスト向け説明会に登壇した岐部社長は「われわれは投資ファンドに対するホワイトナイトとして行ったわけでもなければ、銀行主導で救済に入ったわけでも全くない」とあくまで成長のための投資であると訴えた。
識者の見方/日本総合研究所 シニアマネジャー 近藤大介氏
建設業界全体に影響を与える経営統合と認識している。両社の主戦場が異なることもあり、お互い事業が補完関係にあること、プレキャスト工法の拡大により両者の生産性向上が見込まれること、規模拡大による経営の安定と競争力強化が想定される。
一方で、「単純な足し算になるかは分からない。お互い(の強みや弱み)を補完できる関係なら効果はあると思うが、今回の場合はどうか」(大手ゼネコン幹部)、「結果的な規模の利益追求だとしたら、個人的には魅力的には映らない」(地方の準大手ゼネコントップ)といった慎重な意見も聞かれた。
岐部社長はそうした指摘を真っ向から否定する。「売上高を目指してやっているわけではない。スーパーゼネコンに追いつくなどは全く考えていない。そうではなくて、請負と脱請負の融合という、日本で唯一のモデルを目指している」と力を込めた。買収する三井住友建設側の間接部門などに対する人員整理の可能性については、「われわれも人材が足りないぐらいだ。グループの中で融通し合うことも含めて、人材を整理してコストメリットを創出することは考えてない」と断言した。
◆業界再編の契機にも
それぞれの傘下にいる道路舗装会社の位置付けにも注目が集まる。「ゆっくり時間をかけて検討する」(岐部社長)としているが、インフロニアHDと三井住友建設のシナジーと同様に、前田道路と三井住建道路の間でも同様の効果が想定できる。例えば、前田道路は関東に複数の拠点があるが高い繁忙状態にあるという。その補完を三井住建道路が担えるほか、九州、北海道といった同社が強みを持つ地域へのさらなる展開も見込める。合材工場の空白地帯を埋め、お互いのシェア拡大といったメリットも期待される。
道路建設会社の幹部は「業界再編の象徴と言えるのではないか。長期的に見れば、市場規模は縮小していく。われわれ(舗装業界)の事業量を見ても、アスファルト合材の出荷量が連続で過去最低を記録し、プラントの閉鎖も増えている。現在の企業数を維持できるとは思えない。どういう形か分からないが今後もM&Aは続くだろう」と今後の波及の可能性を指摘する。
◆ホワイトナイトではない
今回の統合で、もう一つ注目が集まったのはアクティビストの影響だ。三井住友建設の大株主には旧村上ファンド系の投資会社が名を連ねるが、14日の記者会見ではその関与への質問が挙がった。三井住友建設の柴田敏雄社長は「彼らは建設業界に対して、基本的には再編論者であり、もう少し社数を減らすべきだという話をされていた。ただ、今回の経営統合はファンドによる提案では一切ない」と内幕を明かした。
同日夜のアナリスト向け説明会に登壇した岐部社長は「われわれは投資ファンドに対するホワイトナイトとして行ったわけでもなければ、銀行主導で救済に入ったわけでも全くない」とあくまで成長のための投資であると訴えた。
識者の見方/日本総合研究所 シニアマネジャー 近藤大介氏
建設業界全体に影響を与える経営統合と認識している。両社の主戦場が異なることもあり、お互い事業が補完関係にあること、プレキャスト工法の拡大により両者の生産性向上が見込まれること、規模拡大による経営の安定と競争力強化が想定される。