【主体性を学んだ貴重な経験】

　中学生で南極地域観測５０周年記念５００円硬貨を目にして以降、南極に心を引かれてきた。ＮＥＣネッツエスアイに入社したのも、１９８７年から社員を南極に派遣していることを知ったためだ。社内公募を経て、多目的アンテナ担当として念願の参加を果たした第６５次南極地域観測隊の経験を通じ、「ミッション達成には、受動的でなく、能動的に行動することが重要と学んだ」と語る。
　設営と観測の二つのミッションがあり、設営は無線設備の維持管理、観測では多目的アンテナを使ったデータの受信が主な仕事。多目的アンテナを覆うレドームは設計寿命を超え、劣化したパネルをシリコン系コーキング剤で補修するが、低温によってコーキング剤が伸びにくく、作業に長時間を要した。「高所作業車を使っての過酷な作業で、風を遮るものがなく、寒さとの闘いだった」と振り返る。
　２４時間体制で受信した地球観測衛星のデータは、各国の気象機関に即時配信されるため、欠損すると世界中に影響を与えかねない。ブリザードに見舞われて昭和基地から離れた衛星受信塔の内部で数日過ごすこともあったが、業務の重大性を強く意識することなどによってミッションをクリアできたと認識する。
　「貴重な経験の機会をいただいた」と総括し、学んだことを生かして「業務や社会に貢献していきたい」と話す。