新社長・日立ビルシステム 山本武志氏 | 建設通信新聞Digital

7月10日 木曜日

企業

新社長・日立ビルシステム 山本武志氏

【デジタルを駆使して成長】
 日立ビルシステムの社長に山本武志氏が就いて3カ月余りが経過した。日立製作所でビルシステムビジネスユニット最高執行責任者(COO)兼Japan Headも兼務する山本社長は、さらなる成長を目指す上で「デジタルが鍵を握る」と強調するとともに、柱である昇降機事業だけでなく他分野への事業拡大にも意欲を示す。どのような事業戦略を描いているのか、山本社長に聞いた。--抱負を
 「現場とコミュニケーションを取りながら、お客さまの声を吸い上げ、経営に生かしたい。成長に向けては、日立グループの企業、例えばデジタル面ではグローバルロジック、空調事業で日立グローバルライフソリューションズと連携しながら経営に当たる」
--成長に向けて何を
 「二つの大きな軸が必要と考えている。一つは柱の昇降機事業。日立が持つデジタルの力を使い、昇降機そのものをデジタライゼーションさせていく。もう一つは、昇降機以外の事業、特にBMS(ビルマネジメントシステム)が成長の柱となる。われわれの強みはフロントラインワーカーによる現場対応力や、そこで得られるデータ、あるいはエレベーターと建物を当社のセンターとつないで得られるデータを事業に回せることにある。これを昇降機以外のビル設備にも活用し、BMSを通じて人手不足や業務の効率化など、ビルに対するお客さまの課題解決に取り組む事業を強化し、伸ばしていきたい」
--昇降機のデジタライゼーションとは
 「開発中の新商品では、施工や保全をもっと効率化するためセンサー化し、機械部品を減らそうとしている。施工や保守の手間が減るため、それに関わる人材の課題解決につながる。デジタライゼーションで、お客さまとつながりをもっと大きくして、エレベーター内での情報提供の質を高め、内容も増やしていく」
--BMSの展開は
 「BuilMirai(ビルミライ)というブランド名で大型ビルや、中小規模ビルに展開している。ビル内のさまざまな設備やデータを統合した効率的なビル管理、快適なビル空間の創出、ビル入居者の満足度向上を実現するもので、ニーズに合わせてアプリケーションを選んでもらう形となる。今後はこれを海外にも広げたい」
--国内外の展開は
 「国内新築は、2032年ぐらいまで一定量は見えている。国内リニューアルは成長分野と考え、ダウンタイム(運転停止時間)を少なくする部分的交換など、保守の延長線上でメニューを広げリニューアルを拡大したい。海外のうち最もシェアの大きい中国は、不動産市況の低迷に伴い新設需要が落ち込んでいる。ただ、リニューアル需要の増加が見込まれるため、他社の機器をある程度残しながら日立製品に入れ替えることに挑戦していく。インドでは事業拡大に向けてきちんと足元を固め、中国からの輸入やローカライズも考えながら量を増やしていく」
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 (やまもと・たけし)1984年3月鳥取県立米子工業高校卒後、同年4月日立エレベータサービス(現日立ビルシステム)入社。2024年日立製作所ビルシステムビジネスユニットCOO兼日本事業統括本部長兼Deputy Japan Head兼日立ビルシステム取締役副社長日本事業統括本部長などを経て、25年4月から現職。趣味はゴルフやトレッキングなど体を動かすこと。鳥取県出身。65年9月30日生まれ、59歳。
◆記者の目
 日立ビルシステムの前身の会社から振り返っても、初めてプロパーで社長まで上り詰めた人物となる。たたき上げだからこそ、現場を知り尽くし、現場とのコミュニケーションも取りやすい強みがある。社長になったからには、成長の柱と位置付けるBMS事業を次世代にしっかりと引き渡したいとの思いを抱く。「そのために事業をきちんとした形に持っていきたい」とも。体を動かすことが好きな持ち前の行動力とプロパーの強みが、さらなる成長をけん引する。