県外業者が能登視察 復旧連携の在り方探る/地元の限界超えた工事量、復興後見据え対応/CCA・和合館工学舎 | 建設通信新聞Digital

7月10日 木曜日

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県外業者が能登視察 復旧連携の在り方探る/地元の限界超えた工事量、復興後見据え対応/CCA・和合館工学舎

遠隔操縦のバックホーを使った輪島市曽々木地区の地すべり復旧現場も見学
能登の地元企業と意見交換
国関係者も参加した交流会
 全国各地の地域建設会社有志で構成する地域建設業新未来研究会(CCA)と建設技術者の教育・養成機関である和合館工学舎は、合同で能登半島地震の復旧現場を視察した。被災した奥能登地域で復旧に取り組む地元建設会社から現況や課題を聞き、今後の復旧・復興工事に対する県外勢の応援や参画の在り方について意見交換した。 両団体、特にCCAには全国建設青年会議での活動経験者が多く、今回の企画も同会議を通じて知り合った石川県内関係者と開催を協議し、「被災地と全国の地域建設業者がウィンウィンの関係・連携ができれば」「今後も起きる大規模災害に対して効果的な復旧復興のやり方を一緒に考えたい」との思いで実現に至ったという。
 一行約40人は大型バスで6月17日、輪島市に向かった。能登への基幹道路である「のと里山海道」では途中から、線形が上下左右に大きく変位する仮設道路を被災から1年半たった今も利用している実態と、現道の想像以上の損壊ぶりに驚きの声が上がっていた。大規模火災で建物約240棟が焼失し、約4万9000㎡が更地と化した輪島朝市通り一帯の視察後、奥能登地域の地元建設会社の経営者と意見交換した。
■地元が積極的に参入を呼び掛け
 地元業者は、災害査定がほぼ終わって全体の概要がようやく見えてきたとして、「例えば穴水町の場合だと通常、町内全体の年間仕事量は20億くらいだが、今後5年で復興するとした場合、工事量は年間200億円となり、その1割しか施工力がない。『手に余る』を通り越している。どなたでもいいので(被災地に)入っていただきたい」と呼び掛けた。
 別の業者は「金沢地域の方ともJVを組んでやっている。発注者からはもっと工事を請けてほしいと言われるが全然手が足りない。Cランクでも下請けでもいいので、とにかく県外から入ってほしい」と訴えた。
 「震災前からマンパワーは不足していた。手が全く足りない。このままだとますます疲弊が進む。ぜひ手伝って」と求める業者もいた。一方、「復旧工事があるので、あと10年は仕事を探す必要がない。(大事なのは)その仕事で出た利益を今後、地域にどう還元していくかだ。インフラが整えば仕事はなくなるので、将来のために建設以外の仕事をつくっていかなければと考えている」と見通しを語る業者もいた。
 これに対し、視察に訪れた企業からは宿舎など環境面の現状や今後の予定を確認する質問が上がった。また、熊本地震や東日本大震災の復旧に携わった参加者からは復興係数の適用状況など、県外からの参画者にとってもインセンティブとなる条件や環境を整えることの重要性を説くアドバイスがあった。
 復興終了後のことを射程に入れた取り組みに早い段階から着手しておくべきとの指摘も目立った。「復興が終わると本当に仕事がなくなる。未来を見据え、それ以外のことを考えておかないとだめだ」「目の前の復興のことばかり考えがちだが、10年後の人材育成のこともしっかり考えるべき」「復旧工事だけでなく、通常の補修工事などもバランス良く受注して取り組んでおくようにした方がいい」といった大災害の復興経験者ならではのアドバイスが相次いだ。視察終了後には金沢市内で能登地域の企業と金沢市に本社を置く県内企業や国交省能登復興事務所の関係者も参加した交流会が開かれ、活発な意見交換が行われた。
■参入リスク冷静に判断
 今回の視察に先だって県外企業の関係者からは、宿舎や資機材の確保、地域情報の提供といった条件や環境がそろっていれば復興JVや下請けでも参画したいとの意向を多く耳にした。また、「東日本大震災の時の恩返しで、要望があるなら下請けでぜひ参画したい」との声が上がる一方、「応援に来たいが、(自社の)人手不足でままならない」との企業も少なくなかった。
 金沢地域のある業者は「本復旧工事は発注ばかりがどんどん積み上がっているが、そのほとんどが着工していない。この膠着(こうちゃく)状態が動かないと先が見えてこない。県外からの参入にもインセンティブとなる復興係数の適用にしても具体の着工案件が出てこないと検討にすら入れない」と現状を説明する。その上で「着工件数の増加に伴って出てくる問題もあろう。地元が自分たちで整理すべき問題がまだ多く、それが見えてきてから県外から入ってきた方がいいのではないか」と提案する。
◆記者の目
 奥能登の地元建設業者数は長く減少傾向をたどってきたが、被災で離職者が続出し、業容もさらに縮小。復興JV組成にも限界がある。県外企業参入への奥能登業者の期待は大きいが、見知らぬ土地に人材や物資を持ち込み作業する県外勢にとっては参入条件や環境の入念なチェックは大前提だ。災害協定という限定された枠の中での連携と、入札で個々の企業体が請け負って進めていく段階での連携とは当然、目的と求められる責任が異なってくる。冷静な判断と双方の持続的なコミュニケーションが不可欠だと感じた。

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