河道閉塞対応ロボシステム応急復旧動作を確認/九大キャンパスで実証実験/実現可能な技術から現場導入/CAFEプロジェクト | 建設通信新聞Digital

7月14日 月曜日

団体

河道閉塞対応ロボシステム応急復旧動作を確認/九大キャンパスで実証実験/実現可能な技術から現場導入/CAFEプロジェクト

永谷教授
投下型デバイスで地盤強度調査
遠隔操作で障害物撤去
遠隔で排水ポンプを設置する
 永谷圭司筑波大教授がプロジェクトマネージャーを務めるCAFEプロジェクトの研究チームは10日、九大伊都キャンパス内の実証フィールドで河道閉塞対応ロボットシステムの公開実証実験を実施した。プロジェクトの集大成となる実験で、中規模程度の河道閉塞環境下で実機による応急復旧動作を確認した。 CAFEプロジェクトは、内閣府・科学技術振興機構が推進するムーンショット型研究開発事業の目標3「自ら学習・行動し人と共生するAI(人工知能)ロボット」の一環で、これまで人力に頼っていた災害対応をUAV(無人航空機)や複数の小型建設ロボットで実現する。プロジェクトに参加する東大や東北大などの学術機関、国際航業、熊谷組などの民間企業がグループに分かれ、応急復旧作業・調査技術の研究開発を2020年12月にスタートした。最終年度となる25年度は各グループが研究開発した技術の統合に取り組んでいる。
 今回の実証実験は、▽河道閉塞の緊急調査▽UAVを使った地盤調査▽障害物の排除・掘削▽建設作業用センサポッドの設置▽作業路・排水ポンプ・排水装置の設置--の一連の動作を対象とする。
 緊急調査では、国際航業がUAVの運搬設置技術を活用した長距離通信と1週間継続して観測できる小型軽量の水位センサー、地形情報取得センサーを開発。実験時の動画を紹介するとともに、3D地図プラットフォーム「Cesium」を使った情報共有技術を実演した。
 地盤調査では、投下型の地盤強度計測デバイスを開発した東北大がUAVを使って高さ約5-10mの上空からデバイス(鉄球)を落とし、地盤に衝突する際の衝撃加速度から地盤強度を推定する様子を披露した。
 障害物の排除・掘削では成蹊大がヘリコプターで運搬可能な3t未満の小型建設ロボットを遠隔操縦して障害物除去や地面の整地、建設作業用センサポッドの設置では九大が杭型センサーによる環境情報取得技術を実演した。
 作業路・排水ポンプ・排水装置の設置では、熊谷組が車載カメラやUAVの映像を基に小型の建設機械を遠隔操作して大型建設機械と同等以上の性能で排水作業を可能にするロボットシステムを開発。軟弱地盤対策で開発した走行路補強マットを河道閉塞の水際まで設置することで走行路を確保し、排水ポンプを設置する様子を披露した。実験では、不整地運搬車が運搬、ロータリーフォークを備えた油圧ショベルが設置を担った。今回実演したロボットシステムは、16年熊本地震で被災した熊本県の農業用ため池「大切畑ダム」の復旧工事で25年度中の導入を予定している。
 公開実証実験を終えた永谷教授は「模擬環境であるとはいえ、全てがそれなりに動いており、完成度が高い。今回の実験を評価すると80点だ。今後は実現可能な技術から現場に導入することになる」と述べた。